タグ: トヨタ

  • トヨタ WRC史上最多タイ10度目の王座 6連覇でランチアの大記録に並ぶ

    トヨタ WRC史上最多タイ10度目の王座 6連覇でランチアの大記録に並ぶ

    TOYOTAGAZOO Racing WRTが2026年WRC(世界ラリー選手権)のマニュファクチャラーズタイトルを獲得し、通算10度目の王座に輝いた。これによりトヨタは、ランチアが保持していたWRC史上最多のマニュファクチャラーズタイトル獲得記録に並んだ。

    さらに2021年から6年連続でタイトルを獲得。こちらもランチアが1987年から1992年に記録した6連覇に並ぶ歴史的快挙となった。ラリー・チリ・ビオビオではオリバー・ソルベルグが優勝し、トヨタは残り2戦を残して2026年の王座を確定させた。

    トヨタがWRC通算10冠 ランチアの最多記録に並ぶ
    トヨタはラリー・チリを迎えた時点で、マニュファクチャラーズタイトルを数学的に確定させるために必要だったのはわずか7ポイントだった。

    そしてチリで十分なポイントを獲得し、10月のラリー・イタリア・サルディニアと最終戦サウジアラビアを待たずしてタイトルを確定させた。

    トヨタにとって今回が通算10度目のWRCマニュファクチャラーズタイトルとなる。

    最初の王座は1993年。翌1994年にも連覇を達成し、1999年には3度目のタイトルを獲得した。

    2017年にWRCへ復帰すると、翌2018年には早くもマニュファクチャラーズ王座を奪還。そして2021年から2026年まで6年連続でタイトルを獲得した。

    これによって通算タイトル数は10回となり、ランチアと並んでWRC史上最多となった。

    6連覇でもランチアの歴史的記録に並ぶ
    トヨタが達成したのは通算10冠だけではない。

    2021年に始まったマニュファクチャラーズタイトルの連続獲得記録も6年に伸びた。

    これまでWRCにおける長期支配の象徴となっていたのが、ランチアが1987年から1992年に達成した6年連続タイトルだった。

    トヨタは2021年、2022年、2023年、2024年、2025年、そして2026年と一度も王座を譲ることなく6連覇を達成。ランチアが築いたもうひとつの歴史的記録にも肩を並べた。

    ソルベルグの勝利で歴史的タイトルに花
    その記念すべき週末にトヨタへ勝利をもたらしたのが、24歳のオリバー・ソルベルグだった。

    コ・ドライバーのエリオット・エドモンドソンとともに3日間を安定して戦い抜き、9度のWRC王者セバスチャン・オジェに16.6秒差をつけてラリー・チリ・ビオビオを制した。

    3位にはヒョンデのアドリアン・フルモーが入り、首位から33.3秒差でフィニッシュした。

    ソルベルグは金曜日のオープニングステージで首位に立った。SS2終了後に一時エルフィン・エバンスにトップを譲ったものの、その後は変化し続けるコンディション、荒れた路面、難しいタイヤマネジメントに対応しながらラリーをコントロールした。

    今回がソルベルグにとって通算3度目のWRC総合優勝。2026年シーズンでは開幕戦ラリー・モンテカルロに続く2勝目となった。

    2025年のラリー・エストニアでトヨタのRally1マシンによるデビュー戦優勝を飾ったソルベルグは、フル参戦となった今季もその実力を証明している。

    エバンスのタイヤトラブルで展開が一変
    最終日を迎えた時点で、ソルベルグはエバンスに19.1秒のリードを築いていた。

    しかし、日曜日最初のカランパングエでは選手権首位のエバンスがステージ優勝。ソルベルグとの差を13.2秒まで縮めた。

    ソルベルグは続くビオビオの1回目で反撃する。右リアタイヤにダメージを負いながらもステージ最速タイムを記録し、リードを14.5秒まで広げた。

    その後、ラリーだけでなくドライバーズ選手権の行方にも大きな影響を与える出来事が起きた。

    総合2番手を走っていたエバンスが、最後から2番目のカランパングエでマシンを止めてタイヤを交換。2分以上を失い、総合5番手まで後退した。

    これによってオジェが2番手、フルモーが3番手へ浮上。ソルベルグは13.3秒のリードを持って最終ウルフ・パワーステージを迎えた。

    ソルベルグ「完璧な週末だった」
    十分なリードを持ちながらも、ソルベルグは最後までペースを緩めなかった。

    最終ウルフ・パワーステージでもエバンスを0.5秒上回るトップタイムを記録し、ステージ優勝でラリー総合優勝を締めくくった。

    「信じられないような週末でした。浮き沈みもありましたが、チームはいつも支えてくれて、いつもプッシュして、いつも僕を信じてくれました」

    「ようやく少し運も僕の味方をしてくれて、自分の仕事に集中して、自分らしく走ることができました。小さなディテールが重要なんです。そして今週末は完璧、本当に完璧な週末でした」

    オジェはローブに並ぶ通算120回目の表彰台
    2位に入ったセバスチャン・オジェも歴史的な節目を迎えた。

    今回が自身通算120回目のWRC表彰台となり、同じく9度の世界王者であるセバスチャン・ローブの記録に並んだ。

    ヒョンデのフルモーは3位に入り、自身通算13回目のWRC表彰台を獲得した。

    エバンスの後退によってサミ・パヤリが4位に浮上。ソルベルグから1分33.9秒差でフィニッシュした。エストニア、フィンランド、パラグアイで3連勝を飾ったパヤリだったが、チリではそのペースを再現できなかった。

    エバンスは5位でフィニッシュし、ウルフ・パワーステージでも2番手タイムを記録。タイヤトラブルで失ったポイントを少しでも取り戻した。

    「もちろん、できる限り効率よく速く走ろうとしていた。今朝の時点ではかなり良い状況に見えていたけど、こういうことは起こる。僕たちは戦い続ける」

    ドライバーズタイトル争いは残り2戦へ
    エバンスのタイヤトラブルによって、ドライバーズタイトル争いも接近した。

    エバンスは依然としてランキング首位を維持しているが、ラリー・チリを制したソルベルグが21ポイント差まで迫った。また、パヤリはソルベルグを4ポイント上回っている。

    次戦ラリー・イタリア・サルディニアで、エバンスが全ライバルに対して少なくとも36ポイントのリードを築けば、最終戦サウジアラビアを待たずにドライバーズタイトルを確定できる。

    また、WRC2ではヨアン・ロッセルがランチアで優勝。ロバート・ヴィルベスがWRC2チャレンジャー王者、アリ・ターカンが2026年FIAジュニアWRCチャンピオンに輝いた。

    1993年に初めてWRCマニュファクチャラーズ王座を獲得してから33年。トヨタは2026年、通算10度目のタイトルと6年連続王座という二つの記録でランチアに並び、WRC史上最も成功したメーカーのひとつとして新たな歴史を刻んだ。

  • トヨタ ル・マンで液体水素プロトタイプ初走行 水素レース開発が新段階へ

    トヨタ ル・マンで液体水素プロトタイプ初走行 水素レース開発が新段階へ

    TOYOTA RACINGは、第94回ル・マン24時間レースが開催されるサルト・サーキットで、液体水素を燃料とする「TR LH2 Racing Prototype」の一般公開デモンストレーション走行を実施する。モータースポーツを通じて推進してきた水素技術開発において、大きな節目となる取り組みだ。

    今回のマシンは、2026年のル・マン24時間レースに参戦するTR010 HYBRIDと同じシャシーをベースに開発されたプロトタイプであり、将来的な水素レースカー実現に向けた技術開発の加速を目的としている。

    ル・マンの舞台で液体水素レーシングカーを初公開
    TR LH2 Racing Prototypeは、6月11日と6月13日にサルト・サーキットでデモンストレーション走行を実施する。

    全長13.626kmのル・マンの舞台で、水素エンジン特有のサウンドを響かせながら走行することで、観客に新たなモータースポーツの可能性を示す狙いがある。

    単なる展示車両ではなく、実際に走行するプロトタイプとして公開される点が大きな特徴であり、水素エンジン技術の成熟度が新たな段階に入ったことを示している。

    スーパー耐久から続く水素開発の歩み
    トヨタの水素エンジン開発は、日本のスーパー耐久シリーズでROOKIE Racingが参戦させた「ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」から本格化した。

    2021年には気体水素を使用して参戦を開始し、その後2023年には液体水素仕様へと進化。実戦の中で技術開発を積み重ねてきた。

    こうした活動は単なる研究開発ではなく、実際のレース環境で性能や耐久性、安全性を検証するための重要なプロジェクトとして位置付けられている。

    トヨタ TR LH2 Racing Prototypeトヨタ TR LH2 Racing Prototype ル・マン24時間レース

    WRCからル・マンへ広がる水素挑戦
    トヨタはサーキットだけでなくラリーの舞台でも水素技術開発を進めてきた。

    2022年にはGR Yaris H2がWRCイープル・ラリーでデモ走行を実施。その後、GR Yaris Rally2 H2 Conceptが2025年のラリー・フィンランドや2026年のラリー・モンテカルロで走行し、水素エンジンの活用領域を拡大している。

    こうした活動は、水素がサーキット専用技術ではなく、さまざまなモータースポーツカテゴリーで活用できる可能性を示している。

    ル・マンで進化を続ける水素プロジェクト
    ル・マンでは2023年に「GR H2 Racing Concept」が公開され、将来的な水素カテゴリー創設へのビジョンが示された。

    さらに2025年には液体水素を燃料とする「GR LH2 Racing Concept」が展示され、水素レーシングカーの開発が着実に前進していることが明らかとなった。

    そして今年、そのコンセプトを一歩前進させる形でTR LH2 Racing Prototypeが実際にサルト・サーキットを走行する。

    コンセプト展示から実走行プロトタイプへ――この進化は、トヨタが水素を将来のモータースポーツ技術として本気で育成していることを示す象徴的な出来事と言える。

    水素カテゴリー実現への重要な一歩
    ル・マンを主催するACOは長年にわたり水素カテゴリー創設を目指しており、会場内には水素技術を紹介する「H2ビレッジ」が設置されている。

    TR LH2 Racing Prototypeも走行に先立ち同エリアで展示される予定だ。

    電動化だけではないカーボンニュートラル実現への選択肢として、水素は世界の自動車業界から注目を集めている。今回のデモ走行は、将来的なル・マン水素カテゴリー実現に向けた重要なマイルストーンとなりそうだ。

  • トヨタ幻のF1マシン「TF110」 ミュンヘンのF1エキシビジョンで一般公開

    トヨタ幻のF1マシン「TF110」 ミュンヘンのF1エキシビジョンで一般公開

    トヨタが2010年F1参戦用に開発しながらも実戦投入されなかった幻のマシン「トヨタ TF110」が、5月にドイツ・ミュンヘンで開催される「F1 Exhibition」に展示されることが明らかになった。

    F1 Exhibitionは公式SNSを通じて、TF110を「F1における“もしも”の存在」と紹介。2010年の新レギュレーションに合わせて開発されたマシンだったが、トヨタが2009年末にF1撤退を決断したことで、レースを走ることなく歴史に埋もれた1台となった。

    今回の展示では、通常は見ることのできないエンジンカバーを外した状態で公開される予定となっており、来場者は内部構造を間近で確認できるという。

    展示はトヨタ・モータースポーツの協力のもと実現。F1 Exhibitionは「ぜひ間近で見てほしい」と来場を呼びかけている。

    F1 Exhibitionは2026年5月20日にミュンヘンで開幕予定。会場となる「Pineapple Park」では、約3000平方メートル規模の展示エリアを使い、F1の歴史や技術革新、名場面をテーマ別に紹介する。

    ドイツでの開催はオーバーハウゼンに続く2都市目となり、これまでにロンドン、マドリード、メルボルン、メキシコシティなど世界各地を巡回。累計来場者数は130万人を超えている。

    会場では、ミハエル・シューマッハとニコ・ロズベルグがドライブしたメルセデス W02や、マックス・フェルスタッペンが初のF1王座を獲得したRB16Bなども展示される予定となっている。

    【関連】
    ・幻のF1マシン:トヨタ TF110 “優勝を狙えるポテンシャルがあった”

  • トヨタGR GT3 ニュルブルクリンク24時間参戦見送りも年内デビューへ

    トヨタGR GT3 ニュルブルクリンク24時間参戦見送りも年内デビューへ

    トヨタが開発を進める新型GT3マシン「GR GT3」は、2026年のニュルブルクリンク24時間レース(N24)でのデビューを見送ることが明らかになった。ただし、年内の実戦デビューの可能性は維持されており、開発は計画通り進行している。

    2027年の本格投入を前提とするこのマシンは、現行のレクサスRC F GT3の後継として位置づけられている。市販化とグローバル展開を見据えた重要プロジェクトであり、その初陣のタイミングは慎重に見極められている。

    N24デビュー見送りの背景と現在の開発状況
    トヨタは当初、豊田章男会長率いるルーキーレーシングの手によって、GR GT3を2026年のニュルブルクリンク24時間で初投入する可能性が取り沙汰されていた。

    しかし開催まで残り1カ月あまりとなった現時点で、ルーキーレーシングは改良版GRヤリスDATコンセプトでの参戦に注力する見込みとなっている。

    この動きについて、Sportscar365の報道によると、トヨタは依然として年内デビューの可能性を残しつつ、投入タイミングを慎重に見極めているとされる。

    トヨタのモータースポーツグローバルディレクターである加地雅哉は、デビュー時期について次のように説明した。

    「我々は常に、開発の進捗に応じて、どのレースでどのタイミングでデビューさせるのが最適かを判断する方針でした」

    「特定のレースに固執していたわけではありません。したがって、大きな計画変更があったとは考えていません」

    「今もなお、開発上もっとも有利なデビューの場を検討している段階です」

    この発言からも、N24見送りは戦略的判断であり、開発遅延や計画破綻ではないことが読み取れる。

    年内デビューの有力候補とノルドシュライフェでの動き
    現在、GR GT3の実戦投入先としては、ニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)や日本国内レースが候補に挙がっている。

    中でもノルドシュライフェでのテスト走行が確認されていることから、NLSでのデビューが最有力とみられている。

    市販GT3マシンとしての完成度を高めるためには、過酷な耐久環境での実戦検証が不可欠であり、その意味でもNLSは理想的な舞台といえる。

    N24総合優勝に向けたドライバー育成戦略
    GR GT3の投入と並行して、トヨタはニュルブルクリンク24時間総合優勝に向けた準備も進めている。

    坪井翔と福住仁嶺は、先月のNLS第2戦においてKCMGのメルセデスAMG GT3エボをドライブし、ノルドシュライフェのトップカテゴリーに初参戦した。

    加地雅哉はこの起用について次のように語っている。

    「彼らをしっかり準備させたかったというのがあります」

    「モリゾウの目標は将来的にN24総合優勝を達成することですので、そのためには準備が不可欠です」

    「ドライバーだけでなく、チームとしても準備を整える必要があります」

    「坪井と福住は現在のGRにおけるトップドライバーです。将来のラインアップに入るかどうかは分かりませんが、まずは経験を積ませることが重要だと考えています」

    さらに中山雄一、ジュリアーノ・アレジ、小山美姫、小高一斗らもAパーミットを取得し、ノルドシュライフェでの経験を積んでいる。

    日本勢による総合優勝へのこだわり
    トヨタはニュルブルクリンク24時間において、日本車と日本人ドライバーによる総合優勝という明確な目標を掲げている。

    加地雅哉はその意図について次のように述べた。

    「簡単に勝てるレースではありませんが、日本人ドライバーが関わる体制にしたいと考えています」

    「日本のクルマで総合優勝を目指す以上、日本のモータースポーツ界にとっても大きな後押しになるはずです」

    「必ずしも100%日本人ラインアップである必要はありませんが、日本の存在感を示したいという思いがあります」

    この方針は単なる参戦計画にとどまらず、日本メーカーとしてのブランド戦略とも直結している。

    2027年本格投入へ向けた重要な準備段階
    GR GT3は2027年のワールドワイドデビューを見据えた次世代GT3マシンであり、その完成度はトヨタのグローバルGT戦略を左右する。

    今回のN24見送りは一見すると後退にも見えるが、実際には開発精度と実戦投入の最適化を優先した判断といえる。

    年内デビューの舞台と結果次第では、2027年の本格参戦に向けた評価を大きく左右することになりそうだ。

  • トヨタがTF109で仕掛けた“偽フロントウイング” F1ライバルを欺いた舞台裏

    トヨタがTF109で仕掛けた“偽フロントウイング” F1ライバルを欺いた舞台裏

    トヨタTF109は、トヨタがF1から撤退する直前に投入した最後のマシンだった。7年間にわたる参戦の末、世界的な金融危機の影響を受けてプログラムは終了するが、その時点ですでに2010年型マシンは完成し、レースに出られる状態にあった。

    この撤退は、無制限に近い予算が投入されていた「過剰な時代」の終焉を象徴する出来事でもあった。

    トヨタはケルンの拠点に最新鋭の風洞を2基保有し、24時間体制で稼働させていた。空力部門のオフィスは、その2基の風洞をまたぐ橋の上に設けられ、常に新しいアイデアが実験に投入されていた。

    TF109の開発過程で生まれた数多くのアイデアの中に、後にF1の空力設計史に残る“欺瞞”があった。その中心人物が、当時若手だったCFDエンジニア、サミー・ディアシノスだ。

    ディアシノスはオーストラリア出身のCFDエンジニアで、トヨタF1加入時は空力分野で博士課程を修了したばかりだった。研究テーマは、フロントウイングと前輪の相互作用。従来は個別に研究されることが多かった2つの要素を、CFDと風洞試験を組み合わせて包括的に解析するという、当時としては最先端のアプローチだった。

    彼が航空宇宙工学を志したきっかけは、ハーベイ・ポスルスウェイトの助言だった。ヘスケス、ティレル、フェラーリ、ホンダで活躍した名エンジニアは、専門誌で「F1を目指す学生の理想的な進路」を示しており、それをディアシノスは忠実に実行した。

    「F1を見て育った普通のティーンエイジャーだった。ドライバーになりたいとは思わなかった。設計したかったんだ」とディアシノスは語る。

    「レースカー・エンジニアリング誌を読み、ポスルスウェイトが書いていた進路をそのまま辿った。航空宇宙工学を学び、車両力学か空力で博士号を取る。それがF1への近道だと書かれていた」

    高校時代から模型車両をいじり、ワールド・ソーラーカー・チャレンジにも参加。大学ではニューサウスウェールズ大学のソーラーカーチームを率いたが、博士課程に進む条件としてプロジェクトからは一度離れることになった。

    その代わり、彼は地元のモータースポーツ界に飛び込み、フォーミュラ4000や当時のV8スーパーカー下部カテゴリーでレースエンジニアとして活動する。報酬はなく、経験を積むための完全なボランティアだった。

    その学術的成果と現場経験が評価され、2007年、トヨタF1のCFDエンジニアとしてヨーロッパに渡ることになる。

    2009年シーズンを前に、FIAは大幅なレギュレーション変更を導入した。フロントウイングは前輪と完全にオーバーラップする形状が認められ、これはディアシノスが博士論文で研究してきたテーマそのものだった。

    「僕の博士研究は、フロントウイングと前輪がどの程度重なるか、その影響を調べることだった。完全に重ならない状態から、完全に重なる状態まで、迎角や高さを変えて解析していた」

    「2009年のルールは、まさにそれを現実のマシンでやることを要求してきた。完璧なタイミングだった」

    彼はフロントウイング開発チームの一員となり、新しいエンドプレートのコンセプトを提案する。ダブルディフューザーが注目を集めていた時代だが、トヨタはフロントウイングでも独自の解を持ってシーズンを迎えようとしていた。

    しかし、トヨタのエンジニアたちは分かっていた。革新的なパーツは、姿を見せた瞬間からライバルに解析され、コピーされるということを。

    そこで彼らが選んだのが、“偽物”だった。

    TF109の発表時、マシンに装着されていたフロントウイング・エンドプレートは、実戦用ではなかった。ディアシノス自身が、過去に失敗したアイデアを寄せ集め、もっともらしく仕上げたダミー仕様だった。

    「マネジメントから、ローンチ用の偽エンドプレートを作ってほしいと言われた。実際に機能しなかった案を全部組み合わせて、洗練されたように見せた」

    「3Dプリンターで巨大なエンドプレートを作って、発表用のマシンに装着した」

    ローンチからわずか3日後、ポルトガルのアルガルヴェで行われたシェイクダウンで、TF109はまったく異なる本物のエンドプレートを装着して走行した。

    「他チームにいる友人たちから『いい仕事したな、あのエンドプレート』って言われたよ。1週間後に本物が出てくるとは知らずにね」

    現在も出回っているTF109の写真の多くは、この偽物エンドプレートを装着した姿だという。

    トヨタ F1 TF109

    2009年のプレシーズンテストで、トヨタはダブルディフューザーだけでなく、フロントウイングも覆い隠した唯一のチームだった。それほど、このエンドプレート設計は重要だった。

    この種の情報戦は、F1では珍しいことではない。ライバルの開発リソースを誤った方向に誘導し、時間と資金を浪費させるための“競争の一部”だ。

    近年では実車ではなくCGレンダーが使われ、意図的に簡略化されたり、旧世代の仕様が描かれたりすることも多い。

    「風洞とCFDに制限がなかった時代にF1で働けたのは、本当に幸運だった」とディアシノスは振り返る。

    「トヨタでは2基の風洞が24時間動いていた。試すアイデアがなければ、風洞は回せない。だから多少突飛でも、どんどん試させてくれた」

    「最初にスロット付きエンドプレートを描いたとき、マネージャーは『これは機能しない』と言った。でもクラスタに投げてみたら、実際に機能した」

    2009年以降、スロットギャップはフロントウイング設計の標準的要素となり、前輪周辺の流れを制御するための重要な手段として定着していく。

    その後、ディアシノスはウィリアムズに移籍。CFDと風洞の両方に精通したエンジニアとして、両者を結びつける役割を担った。

    「当時はCFDと風洞が完全に分断されていた。僕はその橋渡しができた」

    アンダーノーズのターニングベーンを“単なるダウンフォース部品”ではなく、フロントウイングとフロアをつなぐ調整装置として再定義し、実際にマシンに反映させた。

    その後移籍したケータハムでは、別の教訓を得ることになる。空力改善を狙ってステアリングラックを下げた設計が、致命的なブレーキ冷却不足を招いたのだ。

    「それは完全に僕のミスだった。風洞では良かった。でも、ブレーキ冷却への影響を理解していなかった」

    その判断は2年にわたってチームを苦しめることになる。

    現在、ディアシノスはマッコーリー大学で機械工学の上級講師として、次世代のエンジニアを育てている。CFDと空力に関する研究も続け、F1で得た経験を教育と研究に還元している。

    F1から離れた今も、彼の情熱は変わらない。TF109の“フロントウイングの欺瞞”は、限界なき時代のF1が生んだ、知略と創造性の象徴として語り継がれている。

  • トヨタ、2026年WEC反撃へ進化型ハイパーカー「TR010 HYBRID」を公開

    トヨタ、2026年WEC反撃へ進化型ハイパーカー「TR010 HYBRID」を公開

    トヨタは2026年FIA世界耐久選手権(WEC)に向けた進化型ハイパーカーの公式画像を公開した。2025年10月1日に最初のビジュアルが示されて以降、このマシンは段階的にテストと開発を重ねてきた。

    最初のシェイクダウンは10月8日と9日にポール・リカールで行われ、カモフラージュ仕様ながら初の走行が実施された。その後、マシンはドイツ・ケルンにある風洞へ戻され、さらにFIAおよびACOのホモロゲーション施設として使用されている米ノースカロライナ州ウィンシアでの作業が続いた。

    12月10日と12日には、2026年シーズン開幕戦(3月28日開催)を迎えるカタールのルサイル・インターナショナル・サーキットで追加テストが実施されている。今後も走行は継続され、今月中には再びポール・リカールでのテストが予定されている。

    そして東京オートサロン(1月9日〜11日)を目前に控えたこのタイミングで、トヨタは2026年型ハイパーカーの公式画像を初公開した。

    最大のトピックは「名前」の変更
    今回明らかになった最大のニュースは、技術的な詳細ではなく組織とブランド名の変更だった。

    トヨタ自動車とToyota Racing GmbHは、これまで「Toyota Gazoo Racing Europe GmbH」として知られていた欧州研究開発拠点(ドイツ・ケルン)を、2026年1月7日付で旧称の「Toyota Racing GmbH」に戻した。

    また、トヨタは2016年から2025年までFIA World Endurance Championshipにおいて「Toyota Gazoo Racing」の名で参戦してきたが、2026年シーズンからは新たに「Toyota Racing」ブランドとして参戦し、改良型ハイパーカー「TR010 HYBRID」を投入する。

    リバリーが示す過去と現在のつながり
    TR010 HYBRIDのカラーリングは、前日に発表されたヤリスWRCのリバリーと非常に近いデザインとなっている。両者の視覚的なつながりは新しいものではなく、ヤリスがシルバー基調へ変更されるまで、昨年までも共通性が保たれていた。

    さらにTR010のカラーは、2025年ル・マン24時間で走った7号車GR010 Hybridのデザインからも強い影響を受けている。このデザインは、トヨタGT-Oneへのオマージュとして知られている。

    トヨタ FIA 世界耐久選手権(WEC)

    トヨタLMHにとって「3度目」の大規模進化
    トヨタは2021年にハイパーカー規定で最初に参戦したメーカーであり、その開発の歩みは度重なる技術規則変更の影響を大きく受けてきた。

    デビュー直前には最低重量が70kg引き下げられ、重量配分の再設計を余儀なくされた。こうした経緯から、GR010はすでに2度の大規模アップデートを受けている。

    2021〜2022年のオフシーズンには、フロントタイヤ幅を31cmから29cmへ変更し、リアには34cmを採用。その翌冬にはさらなる軽量化と大幅に改善された重量配分が導入され、空力、シャシー、パワートレインも洗練され、ドライバビリティが明確に向上した。この際、トヨタは使用可能なホモロゲーション・ジョーカーのうち2つ目を使ったとされている。

    今回のアップデートは、トヨタLMHにとって3度目の主要進化にあたる。名称変更はあったものの、このマシンは2026年で6シーズン目の実戦投入となり、ハイパーカー時代では極めて異例の長寿命を誇る。トヨタが2021年から2027年の間に許可されている5つのEvoジョーカーのうち、少なくとも1つを今回使用したことは確実とみられる。

    BoP時代に、なぜ進化が必要なのか
    性能調整がBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)によって管理される中で、なぜトヨタは大きな改修に踏み切ったのか。その狙いは単純な最高速向上ではなく、ドライバビリティ、挙動の一貫性、そして規定ウインドウ内で最適な位置を確保することにある。

    GR010は、ダウンフォースを重視しすぎてドラッグ面で不利になっていた可能性が指摘されている。

    数カ月前、Toyota Racing Europe副社長の中嶋一貴は、この点について次のように語っている。

    「最高速だけを見ているわけではない。ただ、ル・マンではやはりトップスピードが重要だと分かった。デュアルバンドBoPで修正されるはずだったが、まだ差があった。空力や、よりドライバーに優しいクルマづくりと合わせて、そこは改善しなければならない」

    当初、トヨタはこれらの変更を2025年に投入する予定だったが、風洞ホモロゲーション作業がスイス・ヒンウィルからウィンシアへ移されたことで、計画は遅延した。

    「今年のル・マンが、さらに踏み込む決断をさせた」と中嶋は認めている。

    トヨタ自動車 WEC(FIA 世界耐久選手権)

    外観から見える変更点
    トヨタは今回、名称変更以外の詳細な技術情報を公表していない。ただし、外観からいくつかのポイントは読み取れる。

    初めてトヨタのデザイン部門がハイパーカーの造形に関与しており、その影響はヘッドライト形状に最も顕著に表れている。市販車やコンセプトモデルのデザイン言語を想起させる意匠だ。

    さらに、フロントボディワークは全面的に再設計され、スリム化が図られている。これは直線速度向上を狙ったものと考えられる。同様の改良はサイドポッドやリアウイングにも施され、リアウイングはガルウイング状の独特な形状となった。

    2026年型トヨタの使命
    スポーティングな理由であれ、それ以外であれ、トヨタにとって2025年シーズンは極めて失望の大きいものだった。最終戦バーレーンまで表彰台ゼロが続き、コンストラクターズランキング2位を確保した経緯はいまだ説明が難しい。

    係数1.5が適用されたバーレーンでの1-2フィニッシュにより、トヨタはポルシェとキャデラックを一気に逆転したが、それでも2018–2019シーズンから守り続けてきたタイトルを失った事実は変わらない。

    トヨタには明確な雪辱の動機がある。この改良型GR010は反撃の中核として投入され、8度目のコンストラクターズタイトル、そして何より2022年以来となる6度目の24 Hours of Le Mans制覇を目標としている。

    それ以外の結果は、失敗と見なされることになる。

  • トヨタ、2026年WECは新ブランド「TOYOTA RACING」で参戦

    トヨタ、2026年WECは新ブランド「TOYOTA RACING」で参戦

    トヨタ自動車株式会社および欧州子会社のTOYOTA RACING GmbHは、2026年1月7日付で、ドイツ・ケルンに置く欧州研究開発拠点「TOYOTA GAZOO Racing Europe GmbH」の社名を「TOYOTA RACING GmbH」へ変更したと発表した。

    モータースポーツを通じた先端技術開発の中核拠点としての役割を明確化し、長期的にトヨタの技術基盤を支える体制を強化する。

    これに伴い、2016年から2025年まで「TOYOTA GAZOO Racing」として参戦してきたFIA世界耐久選手権(WEC)には、2026年シーズンから新ブランド「TOYOTA RACING」で挑む。

    一方で、GAZOO Racing(GR)は引き続き、FIA世界ラリー選手権(WRC)参戦や、GR YARIS Rally2、GR Supra GT4といったカスタマーモータースポーツを通じ、お客様とトヨタ製品の結びつきを強める活動を継続する。TOYOTA RACING GmbHは、ラリー車両向けエンジン供給やGT4車両生産などでGRの取り組みを支援し、市販車を用いたモータースポーツ活動を今後も推進していく。

    トヨタは、TOYOTA RACING GmbHを軸に先端技術への貢献を加速させるとともに、モータースポーツの魅力を広げ、新たなファンやパートナーと共に未来を創造していくとしている。

    トヨタ WEC 「TOYOTA RACING」

  • TOYOTA GAZOO Racing、名称を「GAZOO Racing」に変更

    TOYOTA GAZOO Racing、名称を「GAZOO Racing」に変更

    トヨタのモータースポーツブランドであるTOYOTA GAZOO Racingは2026年1月7日、設立当初の原点に立ち返る形で、名称を「GAZOO Racing」へ変更すると発表した。モータースポーツを起点とした「もっといいクルマづくり」と人材育成を、これまで以上に強化していく方針だ。

    GAZOO Racingは今後、世界ラリー選手権(WRC)などトップカテゴリーのモータースポーツ活動に加え、市販車を用いたカスタマーモータースポーツまで幅広く展開。

    競技の現場でクルマと人を鍛え、その成果を量産車へ還元するという思想を、ブランド名そのものに込め直す。

    「悔しさ」から始まったGAZOO Racingの原点
    GAZOO Racingの原点は2007年、豊田章男氏(当時副社長)が成瀬弘氏とともにニュルブルクリンク24時間耐久レースへ挑戦したことにある。当時は社内の正式活動として認められず、「Team GAZOO」の名で参戦し、豊田氏は「モリゾウ」のドライバーネームを使用した。

    開発中のスポーツカーを投入する欧州メーカーが並ぶ中、当時のトヨタには走らせるべきスポーツカーすら存在しなかった。コース上で他メーカーの開発車両に追い抜かれるたびに、「トヨタには作れない」と言われているかのような悔しさを覚えたという。

    スポーツカー開発という“クルマづくりの式年遷宮”
    この危機感から始まったのがLFAの開発だった。ニュルブルクリンクを舞台に進められ、2010年に発売されたLFAは、トヨタが約20年ぶりに自社開発した本格スポーツカーとなった。一方で、500台限定という条件が示す通り、その道のりは決して平坦ではなかった。

    開発完了直前には、マスタードライバー成瀬弘氏が事故で急逝するという悲劇も起きた。それでも「モータースポーツの現場でクルマと人を鍛える」という信念は受け継がれ、挑戦は途切れることなく続けられた。

    WRC復帰がもたらした発想の転換
    2017年のFIA世界ラリー選手権(WRC)復帰は、大きな転換点となった。
    それまでの「市販車を作り、その後で競技車を開発する」という流れから、「勝てる競技車を先に作り、その技術を市販車に落とし込む」という逆転の発想が生まれた。

    その象徴が2020年に登場したGRヤリスだ。オートサロンでの発表から同年のスーパー耐久24時間レースでのデビューウインを経て、GRカローラの開発・発売へとつながっていった。

    次なる挑戦とGAZOO Racingの未来
    2025年、豊田章男氏は6年ぶりにニュルブルクリンク24時間レースへ復帰した。次なる挑戦として掲げるのは、トヨタ内製による“トップ・オブ・スポーツカー”の実現だ。GR GT、GR GT3、そしてLFAコンセプトは、その象徴的な存在となる。

    欧州拠点は「TOYOTA RACING」へ
    ドイツ・ケルンの研究開発拠点であるTOYOTA GAZOO Racing Europeは、「TOYOTA RACING」へと名称を変更。パワートレーンや先行開発技術に特化したモータースポーツ活動を担い、長期的な技術開発を推進する。

    また、TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(TGRR)は活動を継続し、GAZOO RacingとTOYOTA RACINGをつなぐ“道場”として、クルマづくりと人材育成の実践の場を担っていく。

    ロゴマークの切り替えは2027年1月に向けて順次実施予定。

    「トヨタには作れない」と言われた悔しさを原点に、GAZOO Racingは再びその名のもとで、モータースポーツを起点としたクルマづくりと人づくりを加速させていく。

  • トヨタの戦略転換 WRC予算の3分の1をハースF1チームへの投資に投入

    トヨタの戦略転換 WRC予算の3分の1をハースF1チームへの投資に投入

    トヨタがモータースポーツ戦略の大きな転換に踏み切った。WRC(世界ラリー選手権)部門の予算のおよそ3分の1を削減して、ハースF1チームへの投資を拡大するとイタリア版Motorsport.comが報じられている。

    2026年の新レギュレーションを見据え、F1への関与を一段と強めるこの判断は、単なる技術提携を超えた長期的なコミットメントを意味する。小松礼雄率いるハースF1チームの成長曲線と、トヨタの将来構想が重なった結果と言えるだろう。

    ハースF1チームは未来を築いている──小松礼雄「トヨタのコミットメントがそれを証明している」
    小松礼雄は、2025年シーズンを振り返り、チームが着実に前進していると総括した。目標として掲げていたコンストラクターズ選手権6位には届かなかったものの、将来に向けた手応えは確かなものだという。

    2025年のハースF1チームは、苦難と高揚が入り混じるシーズンを過ごした。全24戦を終え、獲得ポイントは前年より21点増加し、最終的にコンストラクターズ選手権8位でシーズンを終えている。

    当初の目標であった6位には届かなかったが、その差は13ポイントに過ぎなかった。6位はレーシングブルズが獲得しており、アイザック・ハジャーのルーキーとしての躍進と、リアム・ローソンの復帰が大きな要因となった。長丁場のシーズンを考えれば、その差は決して大きくない。

    「6位という目標を達成できなかったことは、もちろん残念です」と小松礼雄はコメント。

    「しかし、これまでの歩みを振り返れば、ポジティブな要素は非常に多いです。レーシングブルズの6位とはわずか13ポイント差でしたし、アブダビでは再び5番目に速いマシンを持っていました」

    シーズン序盤、ハースF1チームは大きな困難に直面した。VF-25は高速コーナーで深刻な問題を抱え、バウンシングが再発していた。この問題はバーレーンテストでは表面化せず、サクヒールとは異なる特性を持つ開幕戦メルボルンで初めて明らかになった。

    「開幕戦で大きな問題が見つかりましたが、チームは結束を保ち、迅速に解決しました。その後も最終戦までマシンを改善し続けてきました」

    「メルボルンでの車両トラブルから、カタールでのピットストップの問題まで、逆境への対処の仕方が我々の基盤の強さを示しています」

    「来年の大きなレギュレーション変更は、参戦初年度以来最大の挑戦になりますが、我々はその未来に向けてチームを正しく築いています」。

    小松礼雄がシーズン最大のハイライトとして挙げたのが、メキシコGPでのオリバー・ベアマンの4位だった。順位そのもの以上に、その内容が重要だったという。

    「オリーのメキシコでの4位は、我々の能力を明確に示しました」

    「マックスを抜き、ラッセルとピアストリを抑え込み、純粋な実力で強豪チームを打ち負かしました」

    「タイヤマネジメントからピットストップまで、すべてが高いレベルで機能し、メルセデスに対して1秒を稼ぐことができました。このレースは、我々が強みをすべて噛み合わせた時の真のポテンシャルを示していました」。

    2025年に獲得した79ポイントという数字も、チームの成長を裏付けている。

    「前年より21ポイント多く獲得しました。これは我々が大きく前進した証拠です」

    「これほど拮抗した2025年の選手権で79ポイントを獲得できたことは、1年前よりもはるかに強いチームになったことを意味しています」

    「最終戦ではトップチームを除けば、実質的に最速でした。全員が誇りに思うべきです」

    「もちろん、まだ目標には届いていませんが、チームとしての働き方や築いてきた価値観を見れば、将来に大きな自信を持っています」。

    トヨタ自動車 F1

    ハースF1チームは、トヨタ・ガズー・レーシングからの支援強化という大きな追い風も受けている。WRC部門の予算のおよそ3分の1を振り替える形で、チームへの投資が行われたとされている。

    「2026年の新たなタイトルスポンサーは、我々の野心を示しています」

    「競争する意思がないのなら、F1に参戦する意味はありません。より上位を目指し、成長を続けていきたいです。

    「今見えている成長こそが、次のステップへ進むために必要なものだと考えています」

    ハースF1チームは、結果だけでなく、その過程においても着実に基盤を固めつつある。小松礼雄の言葉からは、2026年以降を見据えた確かな自信と、長期的な成長への手応えがにじみ出ている。

  • ハースF1チーム 2026年に向けトヨタTGRを前面に押し出した新ロゴを発表

    ハースF1チーム 2026年に向けトヨタTGRを前面に押し出した新ロゴを発表

    ハースF1チームは、2026年F1シーズンに向けて、Toyota Gazoo Racing(TGR)を前面に押し出した新ロゴを発表した。チームとトヨタの関係強化を視覚的に示す形となり、ロゴ内での「TGR」の位置づけがこれまで以上に明確化されている。

    両者のパートナーシップは2024年に始まり、2025年シーズンにはハースF1チームとして初となるTPC(旧型車テスト)プログラムを共同で実施した。トヨタの技術的知見とハースF1の実戦データを組み合わせる取り組みを通じて、協力関係は段階的に深化してきた。

    2026年からは、ハースF1チームはトヨタ・ガズー・レーシングがチームのタイトルスポンサーに就任して「TGRハースF1チーム」として参戦。新ロゴはその体制移行を象徴するビジュアルとなる。ロゴデザインでは「TGR」の略称がより目立つ位置に配置され、トヨタの存在感を強く打ち出す構成が採用された。

    また、チームはSNS上での表現にも変化を加えている。X(旧Twitter)の公式プロフィール欄には「America’s F1 Team」という表現が記され、2026年にF1参戦を開始するキャデラックF1チームを意識しつつ、既存のアメリカ拠点チームとしての立ち位置を強調する姿勢がうかがえる。

    新ロゴの公開は、2026年の新レギュレーション時代を前に、ハースF1チームがトヨタとの関係を軸にチームのアイデンティティを再定義しようとしていることを示す動きとなった。