ブログ

  • 井上隆智穂 F1ハンガリーGPでメディカルカーにはねられ負傷 31年前の珍事

    井上隆智穂 F1ハンガリーGPでメディカルカーにはねられ負傷 31年前の珍事

    1995年8月13日に行われたF1ハンガリーGPで、日本人ドライバーの井上隆智穂がコース上でメディカルカーにはねられるという、F1史でも屈指の珍事が起きた。

    しかも、井上隆智穂がF1の公式車両と接触したのは、このシーズンだけで2度目だった。ハンガロリンクで起きた一件は、31年が経過した現在も語り継がれる異例の出来事となっている。

    炎上したマシンを消火しようとしてメディカルカーと接触
    1995年8月13日のハンガリーGPでは、ウィリアムズのデイモン・ヒルがポールポジションから全周回をリードして圧勝。チームメイトのデビッド・クルサードが約33秒差の2位に入り、ウィリアムズが1-2フィニッシュを飾った。

    一方、ミハエル・シューマッハはベネトンの燃料ポンプにトラブルが発生し、3周遅れの11位に終わった。

    しかし、このレースで結果以上に強烈な印象を残すことになったのが、フットワークから参戦していた井上隆智穂だった。

    13周目前後、井上隆智穂がドライブするフットワークFA16にエンジントラブルが発生。マシンはランオフエリアにストップし、煙を上げ始めた。

    小規模な火災が発生するなか、マーシャルによる消火が十分に早くないと判断した井上隆智穂は、自らコックピットを降りた。そしてマーシャルポストから消火器を受け取り、マシンへ戻ろうとした。

    そのとき、現場にはタトラ623のメディカルカーが芝生を横切って接近していた。

    井上隆智穂がマシンの方向へ向きを変えた瞬間、後方からやってきたメディカルカーと接触。衝撃でボンネットの上にはね上げられ、そのまま地面へ転倒した。

    井上隆智穂は後に、その瞬間についてこう振り返っている。

    「バーン! 誰かにものすごい勢いではねられた。でも、僕はちゃんと足から着地したんだ。完璧な着地だったよ」

    映像だけを見れば深刻な負傷につながっても不思議ではない事故だったが、幸いにも負傷は左脚の軽傷にとどまった。

    井上隆智穂は次戦ベルギーGPには出場できるまでに回復した。

    病院へのヘリ搬送も「レースが止まる」と却下
    だが、井上隆智穂にとって災難はメディカルカーにはねられたところで終わらなかった。

    事故後、井上隆智穂はサーキットのヘリコプターで病院へ搬送されるものと考えていた。しかし、当時F1レースディレクターを務めていたチャーリー・ホワイティングから、レース中はヘリコプターを使用できないと告げられたという。

    「ヘリコプターで病院に連れて行ってもらえると思っていた。でもチャーリーが来て、『すまない、タキ。ヘリコプターは使えない。使ったらグランプリを止めなければならない。あと1時間、レースが終わるまで待ってくれ』と言われたんだ」

    現在のF1では医療体制やヘリコプターの運用について厳格な基準が設けられているが、1995年当時を象徴するエピソードのひとつでもある。


    実は同じ年のモナコでも公式車両と衝突
    ハンガリーGPの事故をさらに奇妙なものにしているのが、井上隆智穂にとって1995年シーズン2度目の「公式車両との接触」だったことだ。

    同年のモナコGPでは、井上隆智穂のフットワークがコース上で牽引されていた際、ルノー・クリオのコースカーが後方から衝突。フットワークは衝撃で横転し、井上隆智穂は脳震盪を負った。

    そして約3カ月後のハンガリーでは、今度はマシンではなく井上隆智穂本人がメディカルカーにはねられた。

    1シーズンのうちに2度もF1の公式車両との事故に巻き込まれるという、あまりにも珍しい経験だった。

    井上隆智穂はF1でポイントを獲得することはなかったが、1995年ハンガリーGPで消火器を手に走り、直後にメディカルカーにはねられた場面は、31年が経過した現在もF1史に残る珍事として語り継がれている。

  • F1終盤戦 ラスベガス2連戦が幻に NFLとブレグジットが障壁

    F1終盤戦 ラスベガス2連戦が幻に NFLとブレグジットが障壁

    F1のステファノ・ドメニカリCEOは、2026年シーズン終盤の代替開催案として検討された「ラスベガスでの2週連続開催」が実現しなかった理由を明かした。

    中東情勢の影響で終盤戦の開催可否が不透明となる中、F1は複数の代替案を検討したが、NFLとの競合やブレグジット(英国のEU離脱)による物流上の問題が障壁となり、ラスベガス2連戦案は見送られたという。

    ラスベガス2連戦案が浮上した背景
    2026年シーズンは中東情勢の悪化を受け、4月開催予定だったバーレーンGPとサウジアラビアGPが延期された。その後、バーレーンGPはマレーシアで代替開催されることが決定した一方、11月30日のカタールGPと12月6日のアブダビGPについては、現時点でも開催の可否が流動的な状況となっている。

    ドメニカリは、両大会を予定どおり実施できるかどうかについては9月中旬に最終判断を下す予定だと説明。もし両レースが中止となった場合にはヨーロッパで代替レースを開催する方向で準備を進めており、イモラとポルティマオが候補に挙がっている。現時点ではイモラが最有力とみられている。

    その一方で、シーズン途中にはラスベガスで2週連続開催を行う案も検討された。しかし、ドメニカリは複数の理由から実現は困難だったと説明した。

    NFLとの競合は避けたかった
    ラスベガスGPは11月21日に開催予定だが、この時期はNFLレギュラーシーズン第10週から第11週にあたり、全米のスポーツファンの関心がNFLへ集中するタイミングでもある。

    ダラス・カウボーイズ対サンフランシスコ・49ersや、バッファロー・ビルズ対マイアミ・ドルフィンズなど注目カードも予定されており、F1としてはアメリカ市場でNFLと真正面から競合することは避けたい考えだった。

    ドメニカリは、成長を続けるラスベガスGPのブランド価値を守ることも重要な判断材料だったと語った。

    「その時期のヨーロッパの気温統計を見ると、レース開催時のラスベガスの平均気温よりも暖かいくらいだ」

    「ラスベガスで2レース開催する可能性もあった。しかし、成長を続ける宝石のようなイベントの価値を、自分たちで損なうようなことはしたくなかった」

    「その時期のアメリカではNFLと競合する。NFLは非常に大きなスポーツであり、多くのファンが見ている。我々がその巨大な存在と正面からぶつかる状況は避けなければならない」

    ステファノ・ドメニカリ

    ブレグジット後の通関手続きも障壁に
    もう一つの大きな理由が、ブレグジットによる物流面の問題だった。

    現在のF1チーム10チームのうち9チームはイギリスに拠点を置いている。EU離脱後は、機材をイギリスへ持ち帰る際や再び海外へ搬出する際に通関手続きが必要となり、終盤戦のタイトな日程では大きな制約となる。

    ラスベガスで追加レースを開催したあと、イギリスで必要な手続きを済ませて別地域へ向かうスケジュールは現実的ではなく、ヨーロッパでシーズンを締めくくる方が運営上も効率的だったという。

    ドメニカリは次のように説明した。

    「現在の制約を考えると、一度イギリスへ戻ってブレグジット関連の通関手続きをすべて終え、その後に別の場所へ向かわなければならない」

    「だからこそ、同じスケジュールの枠内でシーズンをヨーロッパで締めくくることが唯一現実的な選択肢だった」

    終盤戦の開催可否は9月中旬に判断
    カタールGPとアブダビGPを予定どおり開催できるかどうかは、9月中旬に最終判断が下される予定となっている。

    両大会が中止となった場合には、イモラまたはポルティマオでの代替開催が有力視されているが、ドメニカリCEOの説明からは、興行面でのブランド価値の維持と、ブレグジット後の物流・通関という現実的な課題の両方を考慮した結果、ヨーロッパでシーズンを締めくくることが最も現実的な選択肢と判断されたことがうかがえる。

  • キャデラックF1 グレアム・ロードン電撃解任「双方合意ではない」当日朝に通告

    キャデラックF1 グレアム・ロードン電撃解任「双方合意ではない」当日朝に通告

    キャデラックF1のチーム代表交代は、F1界でも異例の突然の人事となった。プロジェクトの立ち上げから約4年間にわたって中心的な役割を担ってきたグレアム・ロードンが、F1参戦からわずか11戦でチーム代表を退任。後任には元アルピーヌF1エグゼクティブディレクターのマルチン・ブドコウスキーが即時就任した。

    キャデラックF1のCEOを務めるダン・トーリスは、この交代について「双方合意ではない」と明言。さらにロードン本人に決定を伝えたのは発表当日の朝だったことを明かした。

    一方で、代表交代そのものは数カ月前から検討されており、キャデラックF1が次の成長段階へ進むための組織改革だったと説明している。

    「私の決定だった」ロードンに当日朝に通告
    F1がサマーブレイクに入っているなか、キャデラックF1は水曜日午後、ロードンの退任とブドコウスキーのチーム代表就任を発表した。

    61歳のロードンは、トーリスやアンドレッティ家とともに約4年間にわたってF1参戦プロジェクトを構築してきた中心人物のひとりだった。それだけに、参戦初年度のシーズン前半を終えたばかりのタイミングでの交代は大きな驚きをもって受け止められた。

    トーリスはメディアとのインタビューで、今回の決定がロードンとの合意によるものではなかったことを認めた。

    「これは私の決定だった。双方合意ではない。お互いが合意して決めたことではない」

    ただし、代表交代という考え自体が突然浮上したわけではないという。

    「このプロセスが本当の意味で始まったのは数カ月前だったと思う。キャデラックのF1における次のフェーズがどうあるべきなのか、いつが適切なタイミングなのか、どのような形にすべきなのか、そして候補となるさまざまな人々がどのような能力を持っているのかを考え始めた」

    「そしてもちろん、マルチンとの話し合いや、彼との関係がどのように発展していったかについて、我々は非常に満足していた」

    数カ月前から検討も最終通告は発表当日
    水面下では数カ月にわたって検討されていた一方、ロードン本人との最終的な話し合いが行われたのは発表当日の朝だった。

    「そうだ。グレアムと私は今朝話をした。その意味では、本当に直近の話し合いだった。F1でこうした移行を簡単に進める方法はない」

    トーリスによれば、早い段階から後任候補をチーム内部に出入りさせれば、現体制を不安定にする危険性があった。

    「もしマルチンがファクトリーを歩き回って見学していたり、我々がこうした話し合いをしていたりしたら、メディアがどう反応するか想像できるだろう。それでは、その時点で組織が不安定になってしまう」

    「だから、その時点で責任を負っている経営陣の職務範囲を尊重することが重要だった。それによって必然的に、決断を下すまでの時間やスケジュール、すべてを実行に移す方法は限られてくる」

    「そのため、通常とは違って非常に唐突に物事が進んだように見える。しかし、それがF1という世界の性質であり、こうする必要があった」

    つまりキャデラックF1は、交代を検討しながらもロードンが指揮を執っている間の混乱を避けるため、最終段階まで情報を厳重に管理していたことになる。

    ロードンは最初から「暫定代表」だったわけではない
    キャデラックF1が発表した声明では、ロードン退任の具体的な理由は示されなかった。ロードンについて触れられたのもわずかで、経営体制の進化は以前から計画されていたとの説明にとどまった。

    トーリスはロードンとの個人的な話し合いの詳細について明言を避けたものの、将来的な代表交代について両者が以前から話していたことは認めた。

    「グレアムと私は、いつか移行する時が来るということについて常に話をしていた。この決定は私が下したものだ」

    ただし、ロードンがF1参戦を実現させるまでの「暫定的なチーム代表」として起用されていたとの見方は否定した。

    「彼が暫定的な役割としてここにいたと言うのは正しくないと思う。実際にはパフォーマンスと、物事がどのように進展していくかに基づいていた」

    トーリスは今回の交代について、参戦初年度の結果に対する処分というより、キャデラックF1の将来像をめぐる判断だったことを強調している。

    「どの部分でグレアムと私の考えが一致し、どの部分で一致していなかったのか。それについての話し合いは、間違いなくグレアムと私の間だけにとどめる」

    「ただ、達成してきたことについては話せる。私はグレアムを心から尊敬しているし、我々は一緒に本当に多くのことを経験してきた」

    「繰り返すが、私にとってもグレアムにとっても、これは暫定的な期間ではなかった。計画し、組織を築き、必要なすべてのステップを実現するために、ほぼ4年間を費やしてきた」

    キャデラックF1が求める「次のフェーズ」
    今回の人事の背景としてトーリスが繰り返したのが、キャデラックF1の「次のフェーズ」という言葉だ。

    新規参入チームだからこそ、既存のF1チームを単純に模倣するのではなく、新しい組織をゼロから構築できる期間は限られているという。

    「我々が今築いているものを考えれば、新しく革新的なものを構築できる非常に限られた機会が存在している」

    「私が望まなかったのは、すでに誰かが作ったもの、古いものをもう一度作って、それを少し改善しようとすることだった」

    「そして、この変更を行うタイミングが、予想していたよりも早く訪れたのだと思う」

    一方で、参戦初年度にキャデラックF1が経験している苦戦や、ここ数戦で表面化した問題がロードン退任の直接的な原因だったとの見方は否定した。

    「最近数週間のパフォーマンスや初期トラブルが原因だとは言わない」

    「これは本当に、我々が将来に向けて何を構築しているのか、その明確なビジョンを持つこと、どのようなペースで前進しているのか、そしてそれをオーナーたちの野心と一致させることについての判断だ」

    なぜ情報は一切漏れなかったのか
    F1では、ドライバー移籍だけでなく、チーム代表や技術責任者の交代も正式発表より前に情報が漏れることが珍しくない。

    しかし今回、ロードン退任とブドコウスキー就任を示唆する情報はほとんど表に出なかった。ロードン自身も直近のメディア対応で退任を示唆していなかった。

    トーリスは、秘密を維持すること自体が難しかったと認めている。

    「F1でこうした移行を行うときは、知ってのとおり非常に難しい。本当に秘密を守るのが難しい世界だが、今回はこの件についてリークがなかった」

    結果として発表が「電撃的」に映ったのは偶然ではない。現体制の指揮系統を維持し、チーム内部への影響を最小限に抑えるため、キャデラックF1側が意図的に最後まで情報を限定していたというのがトーリスの説明だ。

    ブドコウスキー起用で組織構築を加速
    後任となるマルチン・ブドコウスキーは、F1の技術部門と統括組織、そしてチーム経営の双方を経験してきた人物だ。

    マクラーレンやフェラーリなどで技術職を経験した後、FIAでF1技術部門の責任者を務め、その後ルノー/アルピーヌに加入。アルピーヌではエグゼクティブディレクターとしてチーム運営にも携わった。

    キャデラックF1がブドコウスキーに期待するのは、単なる現場指揮だけではなく、新規参入チームを次の段階へ移行させるための組織構築だとみられる。

    トーリスは、現在のチームとF1を取り巻く状況を考えれば、今が交代のタイミングだったと説明した。

    「スポーツとチームの双方に存在する状況を考えれば、今が適切なタイミングだった。だから、このステップを踏むには今が正しい時期であり、正しい場所だった」

    「グレアムがチームにもたらしてくれたすべてのものに、改めて心から感謝している。そしてマルチンのリーダーシップと、キャデラックの未来がどうなっていくのかを非常に楽しみにしている」

    約4年間をかけてキャデラックF1参戦の基礎を築いたロードン。その役割を評価しながらも、トーリスは参戦わずか11戦でトップ交代を決断した。

    今回の説明から浮かび上がるのは、単純な成績不振による更迭ではなく、オーナー側が求める成長速度や将来の組織像をめぐって、ロウドン体制からブドコウスキー体制へ早期に切り替える必要があると判断したという構図だ。もっとも、トーリスが「一致していた部分と、そうでなかった部分」に言及した以上、両者の間に今後のチーム運営をめぐる考え方の違いが存在していたこともうかがえる。キャデラックF1は、参戦初年度の折り返し地点で早くも次の組織づくりへと舵を切った。

  • セバスチャン・ブエミ フォーミュラE引退 12年間のキャリアに幕

    セバスチャン・ブエミ フォーミュラE引退 12年間のキャリアに幕

    セバスチャン・ブエミが、今週末のロンドンE-Prixを最後にフォーミュラEから引退することが決まった。シリーズ創設初年度から参戦してきた2015-16年王者は、12シーズンにわたるフォーミュラEでのキャリアに終止符を打ち、今後はトヨタでのFIA世界耐久選手権(WEC)ハイパーカー活動に集中する。

    ブエミはフォーミュラEで通算14勝、36回の表彰台、17回のポールポジションを記録。2015-16年にはドライバーズタイトルを獲得した。

    2026-27シーズンからフォーミュラEが新世代マシン「Gen4」へ移行する節目を前に、シリーズを去る決断を下した。

    12シーズン戦ったフォーミュラE創設期の主役
    ブエミは2014年にスタートしたフォーミュラEの初年度から参戦。ルノーe.damsでシリーズを代表するドライバーのひとりとなり、創設2年目の2015-16年シーズンにはチャンピオンに輝いた。

    その後もルノー、そして同チームを引き継いだ日産で長期間にわたって参戦。フォーミュラE黎明期を象徴する存在として、ルーカス・ディ・グラッシらと激しいタイトル争いを繰り広げた。

    特にブエミとディ・グラッシのライバル関係は、Gen1時代のフォーミュラEを特徴づけるものだった。そのディ・グラッシも2026年限りでフォーミュラEを去ることを表明しており、シリーズ創設期を支えた2人が同じロンドンでひとつの時代に幕を下ろすことになる。

    ブエミは2023年に長年所属したワークスチームを離れ、ジャガーのパワートレインを使用するエンビジョン・レーシングへ移籍した。

    Gen3時代では以前ほど頻繁に勝利を挙げることはできなかったものの、競争力を維持。2025年のモナコE-Prixでは優勝を飾り、フォーミュラEで久々となる勝利を手にした。

    エンビジョンでは4シーズンを戦い、2025-26年シーズンがドライバーとして最後のシーズンとなる。

    引退後もエンビジョンに残留
    ただし、ブエミとエンビジョンの関係が完全に終わるわけではない。

    ブエミはレースドライバーの座を退いた後も、アドバイザリーおよび開発担当としてエンビジョンに残り、2026-27シーズンから始まるGen4時代に向けたチームの開発をサポートする。

    エンビジョンのチーム代表シルヴァン・フィリッピは、ブエミとチームメイトのジョエル・エリクソンが今季限りでレースシートを離れることについて語った。

    「これは難しい決断だった。特にセブとジョエルが我々のチームにもたらしてくれた貢献を考えればなおさらだ」

    「Gen4、そしてますます厳しくなるフォーミュラEのカレンダーを見据え、我々はチームにとって重要な開発期間に入ろうとしている」

    「セブの経験はこれからも我々にとって貴重なものになる。アドバイザリーおよび開発という立場で、引き続きエンビジョン・レーシングを支えてくれることをうれしく思っている」

    「2人がエンビジョン・レーシングに与えてくれたすべてに感謝している。ロンドンでGen3時代を最高の形で締めくくりたい」

    エリクソンも今季限りでチームを離れるため、エンビジョンはGen4初年度となる2026-27年にドライバーラインアップを一新する。

    セバスチャン・ブエミ

    トヨタとのWEC活動に集中
    ブエミがフォーミュラEを離れる大きな理由のひとつが、耐久レースでの活動だ。

    ブエミはトヨタのWECプログラムで長年にわたって中心的な役割を担い、ル・マン24時間レースで4勝、WECのドライバーズタイトルも4度獲得している。

    当初発表された2026-27年フォーミュラEカレンダーにはWECとの日程重複が2戦存在していた。その後、2027年モナコE-Prixの日程が変更され、重複は1戦に減少したものの、ブエミはフォーミュラEを継続せず、トヨタでのハイパーカー活動を優先する道を選んだ。

    F1では2009年から2011年までトロロッソでレギュラードライバーを務めたブエミは、わずか23歳でF1のレースシートを失った。

    しかし、その後のキャリアはそこで終わらなかった。

    フォーミュラEという当時まだ将来性が未知数だった新カテゴリーにシリーズ創設時から飛び込み、同時に耐久レースでも成功を重ねた。結果として、フォーミュラE王者、ル・マン4勝、WEC4冠という実績を築き上げた。

    そして12年間にわたって戦ったフォーミュラEでの最後の舞台はロンドンとなる。

    Gen3時代の最終戦であると同時に、Gen4というフォーミュラEの新たな時代への境目でもある。シリーズ創設時から戦い続けてきたブエミにとって、その節目はキャリアに区切りをつける象徴的なタイミングとなった。

    ブエミはフォーミュラEを去るが、モータースポーツから引退するわけではない。今後はトヨタでWECとル・マンでの戦いを続けながら、エンビジョンでは自身が12年間にわたって蓄積してきた経験をGen4マシンの開発へとつないでいく。

  • F1王者ランド・ノリス パパラッチの追跡に怒り「プライベートを侵害された」

    F1王者ランド・ノリス パパラッチの追跡に怒り「プライベートを侵害された」

    2025年のF1ワールドチャンピオン、ランド・ノリスは、知名度の高まりとともに私生活まで追い回されるようになった現状について、「侵害されていると感じた」と強い不快感を示した。

    F1王者となって以降、ランド・ノリスを取り巻く環境は大きく変わった。グランプリの週末だけでなく、サーキットを離れた日常生活でもカメラを向けられる機会が増え、本人は「F1ドライバーであること」と「ひとりの人間として生活すること」の境界線をどこに引くべきかという問題に直面している。

    ロンドンでの外出がSNSで拡散
    ノリスの不満が表面化するきっかけのひとつとなったのが、ロンドンのプライベート会員制クラブ「The Twenty Two」から出てきた際の出来事だった。

    ノリスはそこで、アメリカ人モデル兼インフルエンサーのアリックス・アールと会っていたとされ、店を出たところを撮影された。パパラッチから逃れるように走る姿まで撮られ、その映像や写真がSNSなどで広まった。

    だが、ノリスが問題視しているのは、単に外出しているところを撮影されたことだけではない。F1とは無関係の時間まで継続的に追跡され、誰と会い、どこへ向かうのかまで監視されるような状況になっていることだ。

    「僕も少しずつ歳を重ねてきたし、外に出られるようになりたいんだ。外に出るといっても、パーティーに行くという意味じゃない。友達と夕食を食べたり、家の外に出たりするということだよ」

    「去年だったら、ずっとゲームをして、自分の家にこもって負け犬みたいな気分になっていた。それが悪いことだという意味じゃないよ。自分だけで過ごして、規律を保っていたんだ」

    「でも今は、夜中までゲームをする代わりに、友達と出かけて夜中まで夕食を楽しむようになった。そういうことは昔から好きだったけど、今はその様子がSNSに出ることが増えたし、カメラも増えている」

    「F1の世界の外にある人生を経験するということなんだ。僕にはそうする権利がある」

    F1王者になって変わった日常
    ノリスの発言の背景にあるのは、ここ1年ほどで急激に高まった知名度だ。

    F1ワールドチャンピオンとなったことで注目度はさらに増し、グランプリの週末にはファンやメディアから多くの時間を求められるようになった。ノリス自身も、サーキットにいる間はそれが仕事の一部であることを理解している。

    一方で、私生活については別の線引きが必要だと考えている。

    その考えを決定的にしたのが、ロンドンで友人宅へ向かった際の経験だった。

    「さらに次のレベルになると、パパラッチがどこかで待っていたり、後をつけてきたりする。ロンドンで友達の家に車で向かったとき、パパラッチがずっと僕を追いかけているのが分かったんだ」

    「ロンドンの街中を40分間もずっとついてきた。僕が誰に会うのか、どこへ行くのかを確認するためだけにね」

    ノリスにとって、単に写真を撮られることと、移動先を突き止める目的で長時間追跡されることはまったく別の問題だった。

    「そこで初めて、自分の人生が少し侵害されているように感じるようになった。ホテルや家から出るだけで、誰かが僕の行動をひとつ残らず見ようとしているような状況だからね」

    「人について回るのはおかしい」
    著名なF1ドライバーである以上、完全な匿名性を保つことが難しいことはノリス自身も認識している。

    それでも、有名人だからという理由ですべての私生活が公のものになるわけではないというのがノリスの主張だ。

    「もうプライベートな生活がプライベートだとは感じられない。ただの『生活』になってしまった感じだね」

    「それもF1ドライバーであることの一部ではある。でも、そこには境界線がある。僕は人につけ回されることまでは受け入れない。それは単純におかしなことだよ」

    この発言でノリスは、メディアから注目されること自体を拒絶しているわけではない。サーキットではF1ドライバーとして注目を受ける立場を受け入れる一方、仕事を離れた時間まで継続的に追跡されることには明確に一線を引いている。

    ランド・ノリス(マクラーレン)

    好調マクラーレンを牽引する一方で直面する「王者の代償」
    コース上では、ノリスは直近のF1ハンガリーGPで優勝を飾った。新レギュレーション導入後に出遅れたマクラーレンもここ数戦で競争力を高めており、ノリス自身も再び結果を残し始めている。

    しかし、F1で頂点に立ったことで得たものは、成功や名声だけではなかった。

    世界王者として注目度が高まれば、サーキット外での関心も必然的に大きくなる。ただし、40分間にわたって車で追跡され、誰と会うのかまで探られる行為は、通常の取材やファンからの注目とは性質が異なる。

    ノリスが求めているのは、注目されない生活ではない。F1ドライバーとして公の場に立つ時間と、友人と夕食を楽しんだり、誰かの家を訪ねたりする個人としての時間を区別することだ。

    F1王者となり、以前とは比較にならないほど大きな注目を浴びるようになったノリス。その成功によって変化した日常のなかで、今度は「どこまでが公人で、どこからが私人なのか」という新たな問題と向き合っている。

  • フェルナンド・アロンソ 9億円のランボルギーニでモナコを走行 世界63台限定

    フェルナンド・アロンソ 9億円のランボルギーニでモナコを走行 世界63台限定

    フェルナンド・アロンソが、約590万ドル(約9億円)とされる希少なランボルギーニ「シアン FKP 37」を運転してモナコの街を走る姿が目撃された。

    F1は現在サマーブレイクに入っており、各チームとドライバーはシーズン後半戦に向けて束の間の休暇を過ごしている。45歳のアロンソもそのひとりだが、モナコでの休日を彩ったのは、世界でもわずか63台しか生産されていない特別なランボルギーニだった。

    ナンバープレートには「14」 アロンソ所有車と判明
    SNSに投稿された映像には、ランボルギーニ・シアン FKP 37がモナコ公国の道路を走行する様子が収められている。

    映像だけでは運転席に座っている人物を明確に確認することは難しい。しかし、ナンバープレートにはアロンソがF1で使用しているカーナンバーと同じ「14」が掲げられており、アロンソが所有する車両であることを示す大きな手掛かりとなっている。

    シアン FKP 37はランボルギーニが2019年9月に発表した限定モデルだ。クーペはわずか63台、ロードスターも19台しか生産されず、いずれもすでに完売している。

    「シアン」という名称はボローニャ地方の方言で「稲妻」を意味し、ランボルギーニにとって電動化時代への第一歩を象徴するモデルでもある。

    807馬力を発揮 0-100km/h加速は2.8秒
    シアン FKP 37は、ランボルギーニのV12エンジンに電動システムを組み合わせたハイブリッド・スーパーカーだ。

    最高出力は602kW(807馬力)に達し、登場当時はランボルギーニ史上最もパワフルな市販モデルだった。0-100km/h加速はわずか2.8秒、最高速度は355km/hに達する。

    「FKP 37」という名称は、長年フォルクスワーゲン・グループを率い、ランボルギーニの発展にも大きな影響を与えたフェルディナント・カール・ピエヒのイニシャルと、生誕年である1937年に由来している。


    アロンソが所有する数億円規模のスーパーカーコレクション
    2度のF1ワールドチャンピオンであるアロンソは、熱心な自動車コレクターとしても知られている。

    シアン FKP 37は、アロンソが所有する数百万ドル規模のカーコレクションの一台にすぎない。

    コレクションには、現在所属するアストンマーティンが開発したハイパーカー「ヴァルキリー」をはじめ、フェラーリ・エンツォ、マクラーレン・エルヴァなど、希少価値の高いモデルが含まれている。

    F1でルノー、フェラーリ、マクラーレン、アルピーヌ、アストンマーティンなど複数のメーカー系チームを渡り歩いてきたアロンソだけに、そのガレージもF1キャリアを思わせる多彩な顔ぶれとなっている。

    45歳アロンソ F1での将来にも注目
    一方、アロンソを巡っては、スーパーカーだけでなくF1での将来も大きな注目を集めている。

    アストンマーティンは2026年、エイドリアン・ニューウェイの加入とホンダとの新たなワークスパートナーシップによって大きな期待を集めた。しかし、シーズン前半は期待された競争力を発揮できず、厳しい戦いを強いられている。

    グリッド最年長のアロンソについては、2026年限りでF1を離れる可能性も取り沙汰されてきた。ただし最近では、アストンマーティンとの関係を継続する可能性が高まっている。

    ハンガリーGPでは、アストンマーティンのチーム首脳がアロンソの重要性について語った。

    「もちろん、フェルナンドは素晴らしいドライバーだ。フィードバックという面でも、ドライバーとしての能力という面でも、チームにもたらしてくれるものは非常に大きい」

    「だから、もちろん我々にとって彼は重要な存在だ。フェルナンドは我々と過ごす時間を楽しんでいると思っているし、この関係を今後も続けていけるとかなり自信を持っている」

    2026年シーズン後半、アロンソにはアストンマーティンとホンダの新プロジェクトをどこまで前進させられるかという重要な仕事が待っている。その前に、モナコで世界63台限定のV12ランボルギーニを走らせる時間は、45歳のベテランにとって貴重なサマーブレイクのひとときとなった。

  • ランス・ストロール F1引退をモントーヤが予測「アストンマーティンの2席が空く」

    ランス・ストロール F1引退をモントーヤが予測「アストンマーティンの2席が空く」

    元F1ドライバーのファン・パブロ・モントーヤは、アストンマーティンが競争力を取り戻せなければ、ランス・ストロールがF1から退く可能性があるとの見方を示した。さらにフェルナンド・アロンソも含め、2028年には「2つのシートが空く」と大胆に予測している。

    アストンマーティンは2026年、ホンダとのワークス体制をスタートさせ、エイドリアン・ニューウェイが手掛けるマシンで大きな飛躍を期待された。

    しかし、シーズン前半は技術的な問題やリタイアに苦しみ、期待された結果を残せていない。モントーヤは、この状況が続けばストロール自身がF1を続ける意味を見いだせなくなる可能性があると考えている。

    モントーヤ「マシンが良くならなければストロールは去る」
    ストロールはアストンマーティンと複数年契約を結んでいる。契約延長が発表された際には「2025年以降」もチームに残るとされ、具体的な終了時期は明らかにされていない。

    一方、アロンソの現行契約は2026年末までとなっている。両者とも今後もF1を続ける可能性はあるが、モントーヤはストロールが長期的にアストンマーティンに残り続けるとは考えていない。

    「マシンが良くならなければ、ストロールは去るだろう」

    モントーヤはそう予測した。

    「来年もマシンが良くなっていなければ、2028年にはアストンマーティンの2つのシートが空いていると思う」

    ストロールは2017年にウィリアムズからF1デビューし、2019年にレーシングポイントへ移籍。チームがアストンマーティンとなった2021年以降も継続してドライブしてきた。

    父ローレンス・ストロールがチームのオーナーであることから、その去就は通常のドライバーとは異なる視点で語られることが多い。それでもモントーヤは、ストロール自身が競争力のない状況でいつまでもF1を続けるとは限らないとみている。

    「ストロールのいないアストンマーティンはいずれ実現する」
    アストンマーティンはニューウェイの加入とホンダとの提携によって将来的なタイトル争いを目標としているが、2026年シーズンは厳しい戦いを強いられている。

    モントーヤは、ニューウェイとホンダが状況を好転させることへの期待がある一方で、ストロールにとって待ち続けられる時間には限界があると指摘した。

    「誰もがエイドリアン・ニューウェイとホンダによってマシンが良くなることを期待している。ストロールはもう何年もF1を走っている。本当に状況が良くなっていく兆しが見えなければ、あとどれだけこれを続けたいと思うだろう?」

    そして、アストンマーティンとストロールの関係が永遠に続くわけではないとの考えを示した。

    「遅かれ早かれ、ランス・ストロールのいないアストンマーティンは実現する。来年かもしれないし、その翌年かもしれない」

    2026年はストロール、アロンソともにポイント獲得に苦戦している。ストロールはここまでノーポイントで、アロンソもわずか1ポイントにとどまっている。

    ストロールにとってシーズン前半で最も良い結果となったのは第11戦ハンガリーGPの13位だった。一方のアロンソは14位でフィニッシュした。

    ただし、このハンガリーGPではアップデートされたAMR26Bに一定の改善がみられた。モントーヤも、このレースがチームにとってひとつの転機になった可能性を指摘している。

    「でも、前にも言ったように、ハンガリーでのレースは彼らに新しい活力を与えたと思う」

    「突然、『ちょっと待てよ。これはまた面白くなってきたぞ』という感じになったんじゃないかな」

    ランス・ストロール(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    ニューウェイとホンダの成果が去就を左右
    アストンマーティンにとって重要なのは、ニューウェイが率いる技術陣とホンダが今後どこまで競争力を引き上げられるかだ。

    2026年からホンダのワークスパワーユニットを搭載するアストンマーティンは、新しい技術体制の構築と同時にマシン開発を進めてきた。しかし、シーズン序盤から信頼性やパフォーマンスの両面で課題が表面化し、期待された上位争いには加われていない。

    それでもハンガリーGPでは大規模なアップデートを投入し、ドライバーからもマシンの挙動について前向きな反応が聞かれた。夏休み明けにはホンダも改良型パワーユニットを投入する予定であり、シーズン後半で状況を好転させられるかが焦点となる。

    モントーヤの発言はストロール本人が引退を示唆したものではなく、あくまで外部からの予測だ。それでも、長年アストンマーティンのシートを占めてきたストロールについて「いずれチームを去る時が来る」と踏み込んだ点は注目される。

    アストンマーティンがニューウェイとホンダを軸に復調できれば、ストロールとアロンソが引き続きチームの将来を担う可能性は残されている。逆に低迷が長期化すれば、モントーヤが予測するように、2028年に向けてドライバーラインアップそのものが大きく変わる可能性も出てきそうだ。

  • MotoGPがF1型「予算上限」を検討 エスペレータ「削減の余地は大きい」

    MotoGPがF1型「予算上限」を検討 エスペレータ「削減の余地は大きい」

    MotoGPがF1のような予算上限(バジェットキャップ)の導入を検討していることが明らかになった。MotoGPのスポーティングディレクターを務めるカルロス・エスペレータが、メーカーの支出を抑制する新たな財務規則について検討を進めていることを認めた。

    F1では2021年からコストキャップが導入され、マシンの設計・開発やスタッフの給与など幅広い支出が制限されている。

    MotoGPでは現時点で資金力と成績が単純に比例しているわけではないものの、エスペレータはメーカーの持続可能性を高めるという別の観点から、支出に上限を設ける価値があると考えている。

    MotoGPが予算上限を検討
    MotoGPでは現在、2027年から導入される新テクニカルレギュレーションに向けて大きな変革が進められている。そのなかで、競技面だけでなく財務面についてもF1の仕組みを参考にする可能性が浮上した。

    カルロス・エスペレータは、メーカーごとに企業としての成り立ちや組織構造が異なるため、MotoGPで統一された予算上限を設定するのは簡単ではないと説明する。

    「非常に野心的な目標だ。MotoGPのコンストラクターは、それぞれ異なる企業や背景を持ち、組織のされ方も違う」

    「検討する必要がある。ただ、やろうという意思があれば方法はある」

    F1では2021年に年間予算の上限が導入された。対象にはマシンの設計や性能開発、スタッフの給与などが含まれる一方、ドライバーの給与、最も高額な報酬を受け取る上位3人のスタッフ、マーケティング費用、移動費などは除外されている。

    各チームの支出はFIAによる財務監査を通じてチェックされており、巨額の開発費を投入し続ける競争を抑制する仕組みとなっている。

    こうした制度は、既存チームの財務状況を改善するだけでなく、新規メーカーや企業がF1に参入しやすい環境を生み出した要因のひとつとも評価されている。

    MotoGPでは「お金を使えば勝てる」状況ではない
    ただし、MotoGPとF1では事情が異なる。

    F1でコストキャップが導入された大きな目的のひとつは、チーム間の圧倒的な資金力の差がそのまま競争力の差につながる構造を緩和することだった。

    一方、MotoGPでは必ずしも最大規模の予算を投入するメーカーが最も高い競争力を発揮しているわけではない。2026年シーズンにはアプリリアが大手メーカーを上回るパフォーマンスを見せるなど、予算規模だけでは説明できない勢力図となっている。

    エスペレータも、現在のMotoGPにはコース上の競争を改善するために予算上限が必要なわけではないと強調した。

    「必要なのは別の理由からだ」

    「コース上に問題があるわけではない。そこは強調しておくことが非常に重要だ」

    「今も、いくつかのメーカーが、より大きな予算を持つメーカーを上回っているのを見ていると思う」

    つまり、MotoGPが検討する予算上限は、メーカー間のパフォーマンスを人工的に均衡させることだけを目的としたものではない。

    メーカーの支出削減に「大きな余地」
    エスペレータが重視しているのは、MotoGPへの参戦を長期的に持続可能なものにすることだ。

    最高峰クラスへの参戦には、マシン開発だけでなく、テストチーム、人員、設備、物流など多額の費用が必要となる。技術競争が激しくなれば、メーカーはライバルに遅れないために支出を増やさざるを得なくなる。

    そのため、競争力に直接的な問題が生じていなくても、一定の財務規制を設けることでメーカーの負担を軽減できる可能性がある。

    「重要なのは、なぜこれを行うのか、そしてどのように行うのかという合理的な理由を構築することだと思う」

    「我々の前にはチャンスがある。いくつかのメーカーには、予算を削減できるかなり大きな余地があると考えている」

    MotoGP側としては、単純に「F1が導入して成功したから」という理由で制度をコピーするのではなく、二輪最高峰カテゴリーに適した目的と仕組みを明確にする必要があるという考えだ。

    ギュンター・シュタイナーも予算上限を支持
    F1でコストキャップを経験した人物からも、MotoGPへの導入を支持する声が上がっている。

    元ハースF1チーム代表で、現在はテック3 KTMを率いるギュンター・シュタイナーは、MotoGPのコスト削減策として予算上限が有効だと以前から主張している。

    シュタイナーは、コスト削減を目的として1台体制を導入する案に反対した際、より直接的な解決策として予算上限を挙げていた。

    「お金を節約したいのであれば、非常に簡単な解決策がある。予算上限だ」

    「それがどこで非常にうまく機能したかは、みんな知っている。F1だ」

    F1の財務規則を熟知するシュタイナーにとって、参戦台数や競技そのものを縮小してコストを削減するより、使用できる予算そのものに制限を設ける方が合理的という考えだ。

    MotoGP独自の制度設計が最大の課題
    もっとも、実際にMotoGPで予算上限を導入する場合には多くの課題が残されている。

    F1では基本的に各チームが独立したレーシング組織として運営されているが、MotoGPに参戦するメーカーはロードバイクの研究開発や生産部門など巨大な企業活動の一部としてレース部門を抱えているケースが多い。

    MotoGP向けの研究開発費と市販車向けの研究開発費をどこまで区別するのか、ファクトリーとサテライトチームの支出をどのように扱うのか、メーカーごとに異なる組織構造をどう公平に監査するのかなど、制度設計には複雑な問題が伴う。

    それでもエスペレータは「意思があれば方法はある」として、実現の可能性を否定していない。

    MotoGPではすでに2027年からエンジン排気量を1000ccから850ccへ縮小するなど、大規模な技術規則変更が予定されている。そこに財務規則まで加われば、最高峰クラスの競争のあり方はさらに大きく変化することになる。

    現状では予算上限の具体的な金額や導入時期、対象となる支出項目などは決まっていない。だが、MotoGP側が正式に検討していることをエスペレータが認めたことで、F1で定着したコストキャップという考え方が二輪最高峰カテゴリーにも導入される可能性が現実味を帯び始めている。

  • キャデラックF1 ペレスのウィリアムズ移籍説を否定「2027年も残留すると確信」

    キャデラックF1 ペレスのウィリアムズ移籍説を否定「2027年も残留すると確信」

    キャデラックF1の最高経営責任者(CEO)ダン・タウリスと、新たにチーム代表へ就任したマルチン・ブコウスキーが、セルジオ・ペレスの2027年ウィリアムズ移籍説について言及した。タウリスは「ペレスがキャデラックに残ると強く確信している」と述べ、現時点でドライバー変更を計画していないことを強調した。

    キャデラックは2026年F1サマーブレイク中に首脳陣を刷新し、グレアム・ロードンに代わってブコウスキーをチーム代表に起用した。

    F1参戦初年度は11戦を終えてコンストラクターズ選手権最下位に沈んでいるが、チームは経験豊富なペレスとバルテリ・ボッタスを今後の成長に不可欠な存在と位置づけている。

    ペレスのウィリアムズ移籍説 キャデラックは「まったく気にしていない」
    キャデラックはデビューシーズンを通じて信頼性トラブルにも苦しんできた。ペレスはモナコGPで10位フィニッシュを果たし、チーム初ポイントに迫ったものの、レース後のタイムペナルティによって15位へ降格した。

    そうしたなか、ペレスのマネジメント陣が2027年に向けてウィリアムズと交渉しているとの報道が浮上している。カルロス・サインツJr.が契約満了を機にチームを離れる可能性があり、その後任候補としてペレスの名前が挙がっているというものだ。

    しかし、新代表のブコウスキーは、キャデラックのような若いF1チームにとって、ペレスほど経験豊富なドライバーを擁することには大きな意味があると強調した。

    「僕が仕事を始める前なので、少し難しい質問ではある。ただ、チェコはチームにとって大きな戦力になっている。正直に言えば、2人のドライバーともそうだ」

    「キャデラックが非常に経験豊富な2人のドライバーを選んだことについてはいろいろと言われてきた。しかし、このような若いチームにとって、その経験と安定性は極めて重要だと思っている」

    「ドライバーも学んでいて、同時にチーム全体も学んでいるという状況になれば、変数が多すぎる」

    そのため、ブコウスキーはペレスの存在がチーム構築のうえで重要だと考えている。

    「だから、チェコのようなドライバーがいることは重要だ。ダンとの会話やチームのほかの人たちから聞いている限り、彼は非常に素晴らしい走りをしているだけではなく、舞台裏でもチームをものすごく強くプッシュしている」

    「それはレッドブルで何年も過ごし、最高レベルを知っているドライバーなら当然期待されることでもある」

    「そして、それこそ僕たちが求めているマインドセットだと思う。僕自身も同じような姿勢を持ち込むつもりだ。だから、その考え方や前進しようとする意欲について、僕たちは完全に一致すると思っている」

    キャデラックF1のCEOを務めるタウリスも、ブコウスキーの評価に同意。ペレスを2027年もチームに残せると「非常に確信している」と語った。

    「マルチンが言ったことはすべて強調しておきたい。チェコはチームにとって素晴らしい戦力になっている。非常にいい走りをしているし、間違いなくチームをかなり強くプッシュしている」

    「チェコがキャデラックに残ることを私は非常に確信している。ウィリアムズに関する噂に気を取られていることは一瞬たりともない」

    「われわれはこの関係に非常に自信を持っているし、これからも彼がキャデラックF1マシンをドライブする姿を見ることになると確信している」

    ラファエル・カマラ加入説も「根拠のある話ではない」
    ペレスのウィリアムズ移籍説と並行して浮上しているのが、フェラーリ・ドライバー・アカデミーに所属するラファエル・カマラのキャデラック加入説だ。

    2026年のFIA F2選手権でタイトルを争っているブラジル人のカマラについて、フェラーリが2027年のF1シートを確保するため、キャデラックとローン移籍に関する交渉を始めたとの報道も出ている。

    ペレスが離脱した場合、若手ドライバーを起用する可能性があるかと問われたタウリスは、将来的な選択肢として検討する価値は認めながらも、現在具体的に動いている話ではないと否定した。

    「若いドライバーを入れることでチームをさらにプッシュできるのかというのは、とてもいい質問だ。もちろん、われわれも考えていることではある」

    「われわれには現在、非常に満足している経験豊富な2人のドライバーがいる。2人ともチームをプッシュしてくれているし、われわれも彼らをプッシュし続けていく」

    「ただし、ひとつ付け加えておかなければならないのは、ここがF1だということだ。物事はいつでも変わる可能性がある。現時点で2027年に向けた変更は何も計画していない」

    「もちろん状況が変わる可能性はあるが、われわれが変更を求めているわけではない。若手ドライバーについていくつか噂が出ていることは知っているが、それらには根拠がない」

    「だから、そこに注目する必要はないと思う。現時点でわれわれがそこに焦点を当てているわけではない」

    ラファエル・カマラ

    ブコウスキーが重視するフェラーリPUの「使い切る力」
    カマラ獲得説の背景には、キャデラックとフェラーリの関係もある。キャデラックはF1参戦初期にフェラーリ製パワーユニットを使用しており、フェラーリの若手を起用することで両者の関係を強化する可能性も取り沙汰されている。

    だが、ブコウスキーが現時点で重視しているのはドライバーを介した関係強化ではなく、フェラーリから供給されるパワーユニットの性能をキャデラック側が最大限に引き出すことだ。

    「フェラーリとの関係について言えば、もちろん僕たちはフェラーリのカスタマーだ。レギュレーションに従って、同じハードウェア、同じエンジンを供給してもらっている」

    「ただ、今年はフェラーリに限った話ではないが、特にメルセデスのエンジンを見ても、主にエネルギーマネジメントの細かな部分を理解することで、まだ多くのパフォーマンスを引き出せることが分かっている。それが性能差を生む要素になっている」

    ブコウスキーは、キャデラック自身が「供給されたハードウェアを本当に最大限活用できているのか」を検証する必要があると指摘する。

    「チームとして見なければならないのは、『僕たちは供給されているハードウェアを最大限に生かせているのか?』ということだ」

    「エンジンには競争力がある。アップグレードによって、さらに競争力を増していくだろう。しかし、僕たちは本当にそのポテンシャルを100%使えているのか。そこを確認しなければならない」

    一方で、PUメーカーがすべてのノウハウをカスタマーチームへ開示するわけではないことも、F1では当然の競争の一部だとブコウスキーは捉えている。

    「もちろん、その関係は重要だ。しかし、最大限のパフォーマンスを引き出すためのあらゆるノウハウを、サプライヤーが必ずしも共有してくれるわけではない。それはフェアなゲームだし、そこから先はチーム側の仕事になる」

    「フェラーリを責めているわけでも、グリッド上の誰かを責めているわけでもない。可能な限り最高のエンジンを供給するという部分があり、それを可能な限りうまく使うという部分がある」

    「僕がチームに加わったら、そこは間違いなく確認していくことになる」

    キャデラックにとって、2027年のドライバー市場を巡る噂以上に重要なのは、参戦初年度に浮き彫りとなった課題をひとつずつ解消し、チームとしての競争力を高めることになる。新代表ブコウスキーは、経験豊富なペレスとボッタスを軸にチームを成長させながら、フェラーリ製パワーユニットを含め、現在手にしているパッケージから最大限の性能を引き出すことを最初の課題のひとつとしている。

  • アイザック・ハジャー レッドブルF1で角田裕毅を意識「0.8秒も遅れるはずがない」

    アイザック・ハジャー レッドブルF1で角田裕毅を意識「0.8秒も遅れるはずがない」

    アイザック・ハジャーは、マックス・フェルスタッペンのチームメイトとしてレッドブル・レーシングに加入するにあたり、過去のドライバーたちが苦しんできた状況を理解していた。それでも、自分が1周あたり0.8秒もの差をつけられることは「あり得ない」と確信していたという。

    2026年シーズン前半を終えた現在、その自信は結果によって裏付けられつつある。

    予選でのフェルスタッペンとの平均タイム差は約0.232秒。2025年に角田裕毅が記録した0.735秒、リアム・ローソンの0.880秒と比較すると、その差は大幅に縮まっている。

    さらにローラン・メキース代表も、ハジャーの成長曲線について「非常に長い間で最高」と評価している。

    「同じチャンスなら0.8秒差で負けることはない」
    ハジャーは6月末、Sky Sports F1のカルン・チャンドックとのインタビューで、フェルスタッペンとの比較について手応えを語っていた。

    「とても満足している。マシンがまったく同じ状態だったときは、毎回僕もそこにいた」

    一方で、4度のF1ワールドチャンピオンであるフェルスタッペンとの差を感じる部分もある。

    「同時に言わなければならないのは、彼はコースに出るたびに僕より早くグリップを見つけて、かなり早い段階で基準となるタイムを出すということだ。正直、それは彼に対して僕が予想していた通りだった。ものすごく高いレベルにいる」

    レッドブルでは、ダニエル・リカルドが2018年末に離脱して以降、ピエール・ガスリー、アレクサンダー・アルボン、セルジオ・ペレス、リアム・ローソン、角田裕毅と、フェルスタッペンのチームメイトが次々と交代してきた。

    当然、ハジャーにも不安がなかったわけではない。

    「多少の疑いはある。これまでのチームメイトに何が起きたのかを見るからね」

    「でも同時に、僕は自分を信じている。同じチャンスを与えてもらえれば、1周あたり0.8秒も差をつけられて負けるなんてあり得ない。それが僕の持っている自信だ」

    フェルスタッペンとの差は平均0.232秒
    2026年シーズン前半の予選データを見ると、ハジャーの言葉には数字の裏付けがある。

    フェルスタッペンが予選対決で7勝3敗とリードしているものの、平均タイム差は0.232秒にとどまっている。

    2025年の角田裕毅はフェルスタッペンに対して平均0.735秒遅れ、ローソンはわずか2戦というサンプルながら0.880秒差だった。ハジャーは、その差を約3分の1まで縮めている。

    決勝ではまだフェルスタッペンより上位でフィニッシュしていないものの、チームの獲得ポイントに占めるハジャーの割合も大きい。2025年にはフェルスタッペンがレッドブルのポイントの93%以上を稼いだが、2026年はハジャーがチームポイントの4割近くを獲得している。

    これは単純な速さだけでなく、長年レッドブルを悩ませてきた「セカンドカー問題」が変化し始めていることを示す数字でもある。

    マルコから夏休みに届いた電話
    ハジャーがレッドブル昇格を決定的なものにした背景には、ヘルムート・マルコとのやり取りがあった。

    2025年シーズンの夏休み、翌年のドライバー選考が進むなか、マルコから電話を受けたという。

    「物事が決まり始めていた時期だった。夏休みにヘルムートから電話がかかってきて、『君を後押しするものが必要だ』と言われた」

    つまり、速さへの評価はあっても、レッドブル昇格を正当化する明確な結果が必要だった。

    その要求にハジャーは即座に応えた。

    「夏休み明け最初のレースで表彰台に上がった。僕は、それで十分だと分かっていた」

    2025年オランダGPでレーシングブルズから3位に入り、F1初表彰台を獲得。その結果がレッドブル昇格への大きな後押しとなった。

    2026年にはモナコGPでも一度は3位につけたが、ピエール・ガスリーの順位が復活したことで表彰台を逃している。レッドブルでの初表彰台はまだ実現していない。

    角田裕毅(レッドブル・レーシング)

    メキース「過去は必ずしも完璧ではなかった」
    ハジャーの活躍を評価しているのが、レッドブル・レーシング代表のローラン・メキースだ。

    メキースは、チームが長年抱えてきたセカンドカーの問題について、レッドブル側にも改善すべき点があったことを認めている。

    「レッドブル・レーシングの優先事項には、もちろんパワーユニットがあり、できるだけ早く競争力を取り戻すことがあった。しかし同時に、『セカンドカーの問題を解決しなければならない』というものもあった」

    「過去に我々が必ずしもすべてを完璧にやってきたわけではないことは認識している。だからこそ、アイザックに関して同じことを繰り返さないようにすることは、間違いなく最優先事項だった」

    2025年7月にクリスチャン・ホーナーの後任としてレッドブル代表に就任したメキースは、それ以前にレーシングブルズを率いていた。ハジャーの成長過程も間近で見てきた人物だ。

    「功績はアイザック自身のもの」
    ただしメキースは、レッドブル側の取り組みだけで現在の結果が生まれたわけではないと強調する。

    「誤解してはいけない。功績はアイザック自身のものだ」

    「彼は年初に我々と契約してから、わずか数日後にはイギリスにやって来た」

    「レースが立て込んでいるときでも2週間に1度はファクトリーに来るし、そうでなければ2日に1度だ。シミュレーターに乗らないときには、エンジニアたちと仕事をしている」

    ハジャーが重視しているのは、フェルスタッペンをすぐに倒そうとすることではなく、チームとフェルスタッペンから可能な限り吸収することだという。

    「彼は地に足をつけ、頭を下げて、チームから、マックスから、毎日ただ学ぼうというアプローチを取っている。そしてマシンに乗るたびに進歩している。それが我々に見えているものだ」

    「マシンに乗るたびに少しずつ良くなっている。週末の状況によってそれが見えることもあれば、見えないこともある。しかし、それが現実だ」

    「非常に長い間で最高の成長曲線」
    メキースが特に高く評価しているのは、現在の速さそのものよりも、ハジャーがまだ成長過程にあることだ。

    「これはまだ始まりにすぎない。彼自身も、まだ引き出さなければならないものがたくさんあると分かっている。そこがエキサイティングなところだ」

    そして、レッドブルのセカンドシートをめぐる近年のドライバーたちとの比較について、メキースは明確に語った。

    「確実に言えるのは、このセカンドカーで我々が見てきたなかでは、非常に長い間で最高の成長曲線だということだ」

    2026年夏休み時点で、ハジャーはドライバーズランキング8位につけ、68ポイントを獲得。フェルスタッペンの109ポイントに対して十分な貢献を果たしており、2027年のシートもすでに安泰とみられている。

    新レギュレーションによってフェルスタッペンが旧世代マシンで築いていたアドバンテージがリセットされたことが、ハジャーに有利に働いたとの見方もある。しかし、平均0.232秒という予選差と継続的な成長は、それだけでは説明できない。

    「0.8秒も差をつけられることはない」と信じてレッドブルに乗り込んだハジャーは、少なくともシーズン前半、その言葉を結果で証明している。長年続いたレッドブルのセカンドカー問題に、ようやくひとつの答えが見え始めている。