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  • キャデラックF1新代表 フェラーリPUの「隠されたノウハウ」に注目

    キャデラックF1新代表 フェラーリPUの「隠されたノウハウ」に注目

    キャデラックF1の新チーム代表に就任するマルチン・ブコウスキーは、チームがフェラーリ製パワーユニット(PU)の性能を最大限に引き出せているのかを精査する考えを示した。

    2026年のF1では、新世代PUのエネルギーマネジメントが大きなパフォーマンス要因となっている。ブコウスキーは、ワークスとカスタマーに同一のハードウェアが供給されていても、その使い方に関するすべてのノウハウが共有されるとは限らないと指摘。

    フェラーリを非難する意図はないと強調したうえで、キャデラック側にも改善できる余地があるとの認識を示した。

    新代表ブコウスキーがフェラーリPUの活用法を精査
    キャデラックは将来的にゼネラルモーターズ(GM)製PUを投入してワークスチームとなる計画だが、F1参戦初年度となる2026年はフェラーリからPUの供給を受けている。

    チームはサマーブレイク中に首脳陣を刷新。グレアム・ロードンをチーム代表から解任し、アルピーヌF1でエグゼクティブディレクターを務めたブコウスキーを後任に起用した。

    ブコウスキーが着任後に確認したいポイントのひとつが、フェラーリPUの使い方だ。

    2026年シーズン前半には、ワークスとカスタマーチームの間で新世代PUに関する知識の差が話題となった。特にマクラーレンは序盤戦で、メルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズから提供される情報が十分ではないとの問題意識を示していた。

    新規則では電気エネルギーの管理がこれまで以上に重要となっており、同じPUを搭載していても、その制御や運用方法によって実際に引き出せるパフォーマンスには差が生じる。

    「もちろん、我々はフェラーリのカスタマーだ。レギュレーションに従って、同じハードウェア、同じエンジンを供給してもらっている」とブコウスキーは語った。

    「ただ、今年はフェラーリに限った話ではなく、特にメルセデスのエンジンを見ても分かるように、主にエネルギーマネジメントの細かな部分を理解することで、まだ多くのパフォーマンスを引き出せることが分かっている。それがパフォーマンスを左右する要素になっている」

    「これは我々のチームでも確認しなければならないことだと思う。供給されているハードウェアを本当に最大限に活用できているのか、ということだ」

    「すべての秘訣を共有するとは限らない」
    ブコウスキーは、フェラーリPUそのものの競争力には疑問を持っていない。むしろ重要なのは、キャデラックがその能力をどこまで引き出せているかだと考えている。

    「エンジンには競争力がある。ADUOによるアップグレードで、さらに競争力を増していくだろう。ただ、我々が本当にそのポテンシャルを最大限に使えているのかという問題がある」

    2026年から導入されたADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)は、PUメーカー間の性能差に応じて追加開発の機会を認める仕組みだ。シーズン中の性能評価に基づいて開発機会が与えられるため、フェラーリPUにも今後さらなる性能向上の余地がある。

    一方で、ブコウスキーはPUメーカーとカスタマーチームの関係には、単純なハードウェア供給だけでは説明できない部分が存在すると指摘する。

    「もちろん、サプライヤーとの関係は重要だ。ただ、最大限のパフォーマンスを引き出すための『商売上の秘訣』を、サプライヤーが必ずしもすべて共有するわけではないという部分は常にある」

    「それはフェアなゲームだし、チーム側が取り組むべきことだ。フェラーリや、グリッド上の誰かを責めているわけではない」

    つまり、フェラーリには規則で定められた同等のPUを供給する責任がある一方、そのPUをどう使いこなし、エネルギーマネジメントを最適化するかはキャデラック自身の技術力に委ねられるという考えだ。

    「可能な限り最高のエンジンを供給するという部分があり、もうひとつには、それを可能な限りうまく使うという部分がある」

    「これは間違いなく、僕がチームに加わったときに確認していくことのひとつだ」

    同じPUでも差を生む2026年F1のエネルギーマネジメント
    2026年のF1では、PUに占める電動システムの重要性が大幅に高まったことで、エネルギーの回収、蓄積、放出をどのように管理するかがラップタイムを左右する重要な要素となった。

    そのため、同じメーカーのPUを搭載するチームであっても、ハードウェアが同じだからといって必ずしも同じ性能を発揮できるわけではない。PUの制御方法だけでなく、車体側との統合、ドライバーの操作、レース中のエネルギー配分などを含めた総合的な最適化が必要になる。

    ブコウスキーが例に挙げたメルセデスとマクラーレンの関係は、その難しさを象徴している。2026年序盤には、マクラーレンが新PUの運用に必要な情報についてメルセデス側との間に課題があることを認めており、カスタマーチームが同一ハードウェアから最大性能を引き出す難しさが浮き彫りとなった。

    キャデラックも同じ課題に直面している可能性がある。11戦を終えた段階でチームはまだ今季初ポイントを獲得できておらず、バルテリ・ボッタスが中国GPで記録した13位がここまでの最高成績となっている。

    ブコウスキーにとって、フェラーリとの関係を強化することだけが解決策ではない。供給されたPUについてキャデラック自身が理解を深め、フェラーリが持つすべての運用ノウハウを知らなくても最大限の性能を引き出せる体制を構築することが重要になる。

    将来的にGM製PUを自社で扱うワークス体制への移行を目指すキャデラックにとっても、PUのハードウェアだけでなく、その性能を引き出すための知識と技術をチーム内部に蓄積することは欠かせない。ブコウスキーの着任後、その作業がどこまでキャデラックの競争力向上につながるかが注目される。

  • アストンマーティンF1は4秒差から1秒差へ モントーヤが語るニューウェイの「奇跡」

    アストンマーティンF1は4秒差から1秒差へ モントーヤが語るニューウェイの「奇跡」

    アストンマーティンF1は、ハンガリーGPで投入したAMR26Bをきっかけに復調への兆しを見せている。

    元F1ドライバーのファン・パブロ・モントーヤは、その変化をエイドリアン・ニューウェイの影響力を示すものと評価し、さらにホンダのアップデートによってトップとの差が縮まると予想した。

    モントーヤは、シーズン序盤に最大4秒規模だった差が、今後は「1秒」程度まで縮まる可能性があると分析。AMR26Bを事実上ニューウェイが本格的に手掛けた最初のマシンと位置づけ、2027年にはアストンマーティンとホンダがさらに大きな飛躍を遂げると期待している。

    AMR26Bで流れが変わったアストンマーティン
    2026年の新レギュレーション導入とともに始まったアストンマーティンのシーズンは、当初の期待とは大きく異なるものとなった。

    ニューウェイの加入、ホンダとのワークス体制、新ファクトリーと新風洞。勝利を狙うための条件を揃えたように見えたが、AMR26は開幕から深刻な競争力不足に苦しんだ。

    しかし、ハンガリーGPで大幅にアップデートされたAMR26Bが投入されると状況に変化が生まれた。まだトップ争いに加われる段階ではないものの、マシンの挙動や競争力には明確な改善が確認されている。

    この変化を高く評価しているのが、ウィリアムズやマクラーレンで活躍したモントーヤだ。かつてマクラーレンでニューウェイと仕事をした経験を持つモントーヤは、67歳の英国人デザイナーがアストンマーティンの将来にとって極めて重要な存在だと考えている。

    「アストンマーティンは最後尾から競争できるところまで来た。それはニューウェイの影響が実を結び始めていることを示している」

    「これがニューウェイの最初の本当のマシン」
    モントーヤは、AMR26Bについてニューウェイの思想が本格的に反映された最初のアストンマーティンだと評価する。

    「これがニューウェイにとって最初の本当のマシンだと思う。エイドリアンが加入したときには、すでに多くのことが決まっていた。それは彼が望んでいたものではなかった。だから、すでに決められていたものを使って仕事をするしかなかったんだ」

    ただし、この点については実際の開発経緯とは若干異なる。

    ニューウェイ自身が明かしているように、2025年3月1日にアストンマーティンへ正式加入した時点で、2026年型マシンの開発はむしろ十分に進んでいなかった。

    他チームがFIAの規定に従って1月1日から2026年型マシンの空力開発を開始していたのに対し、アストンマーティンは出遅れていた。さらに、新しい風洞の稼働を待ったことで実質的な作業開始は遅れ、ニューウェイは短期間で設計をまとめる必要に迫られた。

    ホンダ側も、ニューウェイの加入後に多くの設計変更を求められ、パワーユニットについても修正が必要になったことを明かしている。

    つまり、AMR26の問題はニューウェイが既存の完成されたコンセプトを引き継いだことよりも、開発開始そのものが遅れ、十分な検証時間を確保できなかったことにあった。

    その意味では、シーズン途中まで開発を重ねたAMR26Bこそ、ニューウェイが落ち着いた環境で方向性を定め、現在の技術陣とともに作り込んだ最初の仕様と見ることができる。

    ホンダの新パワーユニットがザントフォールトで投入へ
    モントーヤが期待しているのはシャシーだけではない。ホンダも夏休み明けにパワーユニットのアップデートを投入する予定であり、これがアストンマーティンのさらなる前進につながると考えている。

    「これからさらに新しいものが入ってくる。次のザントフォールトでは新しいエンジンが投入される。それがまた一歩前進になるはずだ」

    そして、シーズン後半にはポイント争いへ加わることも可能だと予想した。

    「マドリードやマレーシアの頃になれば、彼らがポイントを獲得していても驚かないよ」

    ホンダが準備している新仕様は、ICEを中心に燃焼効率やフリクション、ターボなどを改善したものとなる。アストンマーティンはハンガリーGP後にテストを実施しており、夏休み明けのオランダGPで正式投入される見通しだ。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

    「4秒差だった。それが1秒になる」
    モントーヤは、ホンダが一度のアップデートですべての問題を解決するとは考えていない。それでも、パワーユニットの競争力は大きく改善すると予想している。

    「エンジンにはまだ問題が残ると思う。でも、パワー面での差は半分くらいまで縮められるんじゃないかな」

    そして、アストンマーティン全体の改善幅について具体的な数字を挙げた。

    「それでも1秒くらいは離されると思う。でも以前は4秒だったんだ」

    モントーヤが強調するのは、単純なラップタイムだけではない。2026年の新レギュレーションで多くのチームがマシン開発に苦戦するなか、ニューウェイが短期間でアストンマーティンの方向性を修正した点を評価している。

    「ニューウェイがやっていることは、ウィリアムズやアルピーヌ、ハースが苦しんでいる状況を見るとよく分かる。この人がやって来て、最初のマシンですでに大半のチームより良いものを作っているんだからね」

    本当の勝負は2027年
    一方、モントーヤはアストンマーティンが夏休み明けから直ちに優勝争いを始めるとは考えていない。

    2026年後半はAMR26Bとホンダの新パワーユニットによって着実に差を縮め、その成果を2027年につなげることが重要だと見ている。

    「夏休み明けにはアストンマーティンが一歩前進すると期待している。でも、本当の大きなジャンプは来年になると思う」

    ホンダにとっても、2026年シーズンを通じて得られる実戦データは大きな意味を持つ。

    「ホンダには今、2027年に向けてさらに大きなステップを踏むための時間がある。ホンダとアストンマーティンは素晴らしい物語を作ると思うよ」

    アストンマーティンにとってAMR26Bは、単なるシーズン途中のアップデートではなく、ニューウェイ主導の開発体制が本格的に機能し始めたことを示す最初の試金石となる。

    モントーヤが示した「4秒から1秒」という数字はあくまで本人の見立てだが、夏休み明けにはホンダの新パワーユニットも加わる。2026年後半でどこまで差を縮められるかが、ニューウェイとホンダによる2027年のアストンマーティンF1の競争力を占う重要な指標となりそうだ。

  • レッドブルF1 苦戦するRB22にワシェ「自信を持てる状態ではない」

    レッドブルF1 苦戦するRB22にワシェ「自信を持てる状態ではない」

    レッドブル・レーシングのテクニカルディレクターを務めるピエール・ワシェが、2026年F1マシン「RB22」の現状について厳しい評価を下した。サーキットに持ち込むたびに異なる問題が現れるとして、チームには現在「自信がない」と認めている。

    かつてF1を圧倒したレッドブル・レーシングだが、2026年シーズン前半戦は11戦を終えて未勝利。単純なパフォーマンス不足以上に深刻なのは、RB22の挙動を十分に理解できず、コンディションの変化に対して極めて敏感なマシンになっていることだ。

    「コースに出るたびに違う問題が見つかる」
    レッドブル・レーシングは、2024年にドライバーズ選手権を僅差で逃し、2025年にはマクラーレンにタイトルを奪われた。そして新レギュレーションが導入された2026年も、シーズン序盤から苦戦を強いられている。

    51歳のワシェは、レッドブルだけでなくマクラーレンも前年から出遅れた一方、ライバル勢がシーズン中に大きく進歩したと分析する。

    「我々は最後まで戦った。マクラーレンも同じだと思うが、昨年やっていたことを基準にすれば、両チームとも少し遅れていると思う」

    「他のライバルたちはモナコ以降、大きく進歩している。この新しいマシンでは、サーキットに行ってマシンを走らせるたびに、毎回違う問題が見つかる」

    「我々はそこから最大限を引き出そうとしている。しかし、自信を持てる状態ではない」

    RB22の問題は、単に特定のコーナーやひとつの性能領域に限定されたものではない。サーキットやコンディションが変わるたびに異なる弱点が表面化し、チームがマシンを完全には把握できていないことをワシェの発言は示している。

    実際、その不安定さはコース上でも表れている。

    マックス・フェルスタッペンはオーストリアGPとハンガリーGPの予選でスピンを喫し、オーストリアではバリアに接触してグラベルでストップした。

    さらにフェルスタッペンとチームメイトのアイザック・ハジャーは、セッション中にマシンが自分たちの下で物理的に壊れていくように感じる場面についても言及しており、RB22の構造面を含めた挙動にも懸念が生じている。

    ピエール・ワシェ(レッドブル・レーシング)

    進歩はしているが問題の全体像は見えず
    一方でワシェは、レッドブル・レーシングが開幕時から何も改善できていないわけではないと強調する。

    「最も重要なのは、我々が遅れた状態からスタートしたということだ。そして、間違いなく進歩している」

    「ここまで改善し、現在の位置まで来られたことについては、チームが非常にいい仕事をしたと思う」

    「まだ我々が望んでいる位置にはいないが、できる限りのことをして、何が機能していないのか、何を改善できるのかを理解しようとしている。そのうえで、自分たちがどこにいるのかを見ることになる」

    「ただ、最も重要なのは、チームとしての進歩が非常に興味深いものだったということだ」

    レッドブルはRB22を改善し続けている。しかし現在の問題は、単純にダウンフォースを増やしたり、特定の弱点をアップデートで修正したりすれば解決する性質のものではない可能性がある。

    ワシェが明かしたように、サーキット、路面状況、気温、セットアップなどの条件が変化すると、それまでとは異なる問題が姿を現す。そのためチームは開発を進めながら、同時にRB22そのものへの理解を深めなければならない状況にある。

    フェルスタッペンの母国オランダGPが次の試金石
    夏休み明けのF1は、ザントフォールトで行われるオランダGPから再開する。

    マックス・フェルスタッペンにとっては母国レースであり、大きな期待が集まる一戦となる。一方、レッドブルにとっては、変化するコンディションに敏感なRB22をどこまで安定したパフォーマンス領域に持ち込めるかが重要になる。

    フェルスタッペンの将来をめぐっては依然としてパドックでさまざまな憶測が続いており、マシンへの「自信がない」というワシェの言葉は、レッドブルにとって決して軽いものではない。

    それでも、チームが開幕時から着実に前進していることもワシェは強調している。残る課題は、その進歩を安定した速さへと結びつけられるかどうかだ。

    かつて勝利を前提としてグランプリに臨んでいたレッドブル・レーシングは現在、RB22が次にどんな問題を見せるのか分からない状態で週末を迎えている。2026年後半戦では、速さそのものを追求する前に、まずマシンを理解し、ドライバーが信頼できる状態に仕上げることが最大の課題となる。

  • ギュンター・シュタイナー MotoGPではハースF1式を封印「彼らに私は必要ない」

    ギュンター・シュタイナー MotoGPではハースF1式を封印「彼らに私は必要ない」

    ハースF1で8シーズンにわたってチーム代表を務めた61歳のギュンター・シュタイナーは、MotoGPのTech3ではまったく異なるマネジメントスタイルを採用している。チームのオーナー兼代表となった現在、レース現場の日常業務には深く介入せず、戦略や商業面、ライダー契約といった大きな意思決定に重点を置いている。

    シュタイナーは、ハースF1時代のように組織のあらゆる領域を自ら管理する考えはないと明言する。

    Tech3にはすでに優れたレース運営体制があり、そこに自身が入り込むよりも、F1で培った経験や人脈をチームの成長に生かすことが重要だと考えている。

    ハースF1とは異なるシュタイナーの役割
    ギュンター・シュタイナーはF1で広く知られるようになる以前、ラリーの世界でキャリアを築いた。マツダ、プロドライブ、Mスポーツなどを経て、F1ではジャガー・レーシング、レッドブルに所属。その後、ハースのF1参戦プロジェクトを率い、2016年のデビューから2023年末までチーム代表を務めた。

    ハースではチーム運営のほぼすべてに関与していたが、ジーン・ハースとの将来方針を巡る意見の相違もあり、2023年シーズン終了後にチームを離れた。

    その後、シュタイナーは新たな舞台としてMotoGPを選択した。2025年9月、シュタイナーが率いるコンソーシアムがTech3 KTMを買収。1990年にギ・クーロン、ベルナール・マルティニャックとともにチームを創設し、35年間にわたって率いてきたエルベ・ポンシャラルの時代に終止符が打たれた。

    MotoGPへの直接的な関与はシュタイナーにとって初めてだが、その役割はハースF1時代とは大きく異なっている。

    「少し違う。結局のところ、以前ほかの仕事をしていたときは、それが私の唯一の仕事だった。だが、今はいろいろなこともやっている」

    最大の違いは、レースチームの日常的な運営から距離を置いていることだ。

    「今のところ、今年と来年については、私はもう少し後ろにいるつもりだ。技術的に見れば、ここは非常に優れたレーシングチームだからね。彼らは本当に優秀だ。私を必要としていない」

    「レースをするということに関して言えば、彼らのほうが私よりいい仕事をする。だから、そこに私が入る必要はない」

    レース現場は専門家に任せる
    ハースF1時代のシュタイナーは、技術部門からレース運営、人事、商業面まで幅広い領域に関与していた。一方、Tech3では現場の指揮をニコラ・ゴヨンに任せている。

    「ここでは中間レベルまで、ニコがレーシングチームを運営している。当然、私も何が起きているのかは把握しているが、メカニックやエンジニアについて私が決めることはない。それを管理するのは彼の仕事であって、私の仕事ではない」

    シュタイナーが重点を置くのは、チームの将来を左右する、より大きな判断だ。

    「私がやろうとしているのは、商業面でチームを助けることだ。それから、ライダーに関することのような大きな決断についても手助けしている」

    特にライダー選定については、自ら積極的に関与する意向を示している。

    「そこにはかなり関わっている。私自身がそうしたいからだ。ただ、F1チームにいたころとは違う。あのときは上から下まで、すべてを管理していた」

    Tech3では既存のレース運営組織を尊重し、自身の経験がより大きな効果を生む分野に集中する。シュタイナーにとって、それがハースF1時代との最大の違いとなっている。

    Liberty Media時代のMotoGPでF1経験を生かす
    シュタイナーがTech3で特に価値を発揮できると考えているのが、契約や商業面だ。MotoGPはLiberty Mediaの参入によって大きな転換期を迎えており、シュタイナーはF1がLiberty Media傘下で変化していった過程を経験している。

    「契約については私が担当している。この業界、MotoGP全体が変化していると思っているからだ。そこでは私が役に立てると思う。以前、別のカテゴリーでLibertyが入ってきたときに同じようなことを経験しているからね」

    F1ではLiberty Mediaによる商業権取得後、デジタル戦略やファンへのアプローチ、スポンサーシップなどさまざまな領域で変革が進んだ。シュタイナーは、その環境で築いたネットワークもTech3の武器になると考えている。

    「私は多くの人を知っているし、多くの人が私のことを知っている。それはチームにとって助けになる。チーム全体をもっと大きく、より良いものにしていくためにね」

    つまりシュタイナーがTech3にもたらそうとしているのは、F1チーム代表時代の管理手法そのものではない。むしろF1で得た商業的な経験、人脈、契約交渉のノウハウをMotoGPの新しい環境に持ち込むことが狙いだ。

    Tech3は2027年に向けライダー陣刷新へ
    Tech3は今後もKTMのサテライトチームとして活動し、複数年契約によって2027年に導入されるMotoGPの新テクニカルレギュレーションにも対応していく。

    一方で、ライダーラインアップは大きく変わる可能性が高い。

    現在Tech3で走るエネア・バスティアニーニとマーベリック・ビニャーレスは、ともに2026年限りでチームを離れる見通しとなっている。

    バスティアニーニはトラックハウス・アプリリアへ移籍し、小椋藍の後任になるとみられている。一方、小椋藍はヤマハへ移籍する見通しだ。

    ビニャーレスについてはMotoGPから離れる可能性が浮上している。本人によればKTMから一度は契約を提示されたものの、そのオファーは短期間で撤回されたという。

    こうした状況から、シュタイナーとTech3はすでに2027年の新たなライダーラインアップ構築に動いている。Moto2のセナ・アギウスにチャンスを与える可能性があるほか、ホンダを離れるとみられるルカ・マリーニも候補に挙がっている。

    ハースF1ではチーム代表として組織全体を直接動かしてきたシュタイナーだが、Tech3ではその経験をそのまま再現するつもりはない。レース運営はMotoGPを熟知するスタッフに任せ、自身は契約、商業戦略、ライダー選定などチームの将来を左右する領域を担う。61歳で新たなカテゴリーに挑むシュタイナーは、F1時代とは異なる立場からTech3の成長を支えようとしている。

  • 2026年のF1世界選手権 チケット価格ランキングで日本GPは世界最安クラス

    2026年のF1世界選手権 チケット価格ランキングで日本GPは世界最安クラス

    2026年のF1グランプリを現地観戦するには、いくら必要なのか。全24戦の一般入場券とグランドスタンド席の最低価格を比較すると、開催地によって大きな価格差があることが分かった。

    PlanetF1.comが2026年シーズンの各グランプリについて調査したところ、一般入場券の最低価格は平均で300ドル(約4万8000円)に迫る。

    一方、中国GPや日本GPは世界的に見ても安価で、特に鈴鹿サーキットで開催されるF1日本GPはグランドスタンド席の価格で際立ったコストパフォーマンスを示している。

    F1観戦チケットは開催地で大きな価格差
    世界的なF1人気の高まりに伴い、各グランプリではチケット需要が急増している。多くのイベントが満員の観客を集めるようになり、それに合わせて観戦費用も上昇してきた。

    2026年のイギリスGPでは、週末を通じた観客数が50万人を超え、同イベント史上最大規模を記録した。シルバーストンの週末一般入場券は360ドル(約5万7200円)で、カレンダーでも高額な部類に入る。

    ただし、最も安いグランドスタンド席は620ドル(約9万8600円)で、ほかの高価格帯のグランプリと比較すると突出しているわけではない。

    対照的なのがサンパウロGPだ。インテルラゴスでは週末を通したグランドスタンド席がわずか95ドル(約1万5100円)から設定され、今回の調査では全24戦で最安だった。

    一方、一般入場に近いエリアへのアクセスは240ドル(約3万8200円)。これはサーキット内側に設けられたスポンサーエリアへの入場券で、通常の自由席とはやや性格が異なる。パーティー色の強いエリアとなっており、18歳未満は入場できない。

    最高額はモナコGP グランドスタンドで1170ドル
    グランドスタンド席で最も高額だったのはモナコGPで、週末の最低価格が1170ドル(約18万6000円)に達した。

    モナコでは週末通しの一般入場券が設定されておらず、各日のチケットを個別に購入する必要がある。3日間を合計すると290ドル(約4万6100円)となり、一般入場という観点では意外にもカレンダー平均に近い。

    一般入場券で特に高額なのはアメリカGPだ。サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)の「グラウンドパス」は450ドル(約7万1600円)。一方、最も安いグランドスタンド席は604.50ドル(約9万6100円)となっている。

    F1 日本グランプリ 鈴鹿サーキット

    日本GPは世界屈指のコストパフォーマンス
    価格面で際立っているのが中国GPと日本GPだ。

    中国GPの一般入場券は70ドル(約1万1100円)で全24戦中最安。最も安いグランドスタンド席も235ドル(約3万7400円)に抑えられている。

    F1日本GPも一般入場に相当する西エリア券が1万8000円、最も安い指定席となるG席とO席が2万2000円からとなっている。

    ドル換算ではそれぞれ113ドル、140ドルとして集計されており、特に指定席はサンパウロGPの95ドルに次ぐ安さで、中国GPよりも低価格だ。

    つまり、指定された観戦席からF1を楽しむという条件では、日本GPは2026年カレンダーで2番目に安いグランプリとなる。

    マイアミとラスベガスは最低でも400ドル
    対照的に観戦費用が高いのが、マイアミGPとラスベガスGPだ。

    いずれもF1の商業権を保有するリバティ・メディアが全面的、あるいは共同でプロモーションに関与するイベントで、最も基本的なチケットでも400ドル(約6万3600円)以上となる。

    マイアミGPは一般入場券が430ドル(約6万8400円)、グランドスタンド席が670ドル(約10万6500円)。ラスベガスGPはそれぞれ400ドル(約6万3600円)と875ドル(約13万9100円)で、グランドスタンド席はモナコGPに次いで2番目に高額だ。

    また、シンガポールGPの一般入場券も430ドル(約6万8400円)と高額だが、グランドスタンド席は475ドル(約7万5500円)。差額はわずか45ドル(約7200円)で、座席を確保できるのであればアップグレードの価値は比較的高い。

    欧州で狙い目はオーストリアGPとハンガリーGP
    ヨーロッパで比較的リーズナブルなのがオーストリアGPとハンガリーGPで、どちらも一般入場券は195ドル(約3万1000円)からとなっている。

    なかでもPlanetF1.comが「隠れた逸品」として評価したのがハンガリーGPだ。

    ハンガロリンクはブダペストからアクセスしやすく、自然のすり鉢状の地形を利用したレイアウトによって観戦エリアから広い範囲を見渡せる。また、場所によってはマシンとの距離が比較的近く、F1マシンの迫力を体感しやすい。

    注意点は真夏の暑さだ。一般入場エリアでは日陰が少ないため、暑さへの対策が欠かせない。それでもブダペスト観光と組み合わせれば、チケット価格を含めた週末全体の魅力は高い。

    2026年F1チケット最低価格一覧
    オーストラリアGP:一般入場 約42,900円/グランドスタンド 約63,600円
    中国GP:一般入場 約11,100円/グランドスタンド 約37,400円
    日本GP:一般入場 18,000円/グランドスタンド 22,000円
    マイアミGP:一般入場 約68,400円/グランドスタンド 約106,500円
    カナダGP:一般入場 約46,900円/グランドスタンド 約50,100円
    モナコGP:一般入場 約46,100円/グランドスタンド 約186,000円
    バルセロナGP:一般入場 約36,600円/グランドスタンド 約58,800円
    オーストリアGP:一般入場 約31,000円/グランドスタンド 約39,800円
    イギリスGP:一般入場 約57,200円/グランドスタンド 約98,600円
    ベルギーGP:一般入場 約39,800円/グランドスタンド 約66,800円
    ハンガリーGP:一般入場 約31,000円/グランドスタンド 約49,300円
    オランダGP:一般入場 約58,800円/グランドスタンド 約103,400円
    イタリアGP:一般入場 約43,700円/グランドスタンド 約100,200円
    スペインGP:一般入場 約54,100円/グランドスタンド 約100,200円
    アゼルバイジャンGP:一般入場 約28,600円/グランドスタンド 約103,400円
    バーレーンGP:一般入場 約35,000円/グランドスタンド 約55,700円
    シンガポールGP:一般入場 約68,400円/グランドスタンド 約75,500円
    アメリカGP:一般入場 約71,600円/グランドスタンド 約96,100円
    メキシコシティGP:一般入場 約30,200円/グランドスタンド 約101,800円
    サンパウロGP:一般入場 約38,200円/グランドスタンド 約15,100円
    ラスベガスGP:一般入場 約63,600円/グランドスタンド 約139,100円
    カタールGP:一般入場 約27,800円/グランドスタンド 約46,900円
    アブダビGP:一般入場 約55,700円/グランドスタンド 約103,400円
    サウジアラビアGP:一般入場 約22,100円/グランドスタンド 約42,500円

    一般入場券だけで比較すると中国GPの約1万1100円が最安で、日本GPの1万8000円、サウジアラビアGPの約2万2100円が続く。一方、グランドスタンド席ではサンパウロGPの約1万5100円が最安、日本GPの2万2000円で2位となった。

    2026年のF1観戦は、同じ世界選手権でも開催地によって必要な予算が大きく異なる。とりわけ日本GPは一般入場、グランドスタンドの双方で低価格帯に位置しており、現地でF1を観戦したいファンにとって世界でも屈指のコストパフォーマンスを誇るイベントと言えそうだ。

  • 元フェラーリ育成マヤ・ウィーグ苦境 F1アカデミー卒業後「レース予定がない」

    元フェラーリ育成マヤ・ウィーグ苦境 F1アカデミー卒業後「レース予定がない」

    フェラーリの育成ドライバーとしてF1アカデミーでタイトルを争ったマヤ・ウィーグが、わずか1年でレース参戦の機会を失う厳しい状況に直面している。

    昨季までF1アカデミーのフロントランナーとして活躍したウィーグは、今季に向けて準備していた計画が開幕直前に崩壊したことを明かした。現在は今後出場するレースが決まっておらず、「キャリアで最も厳しい1年」と現在の心境を語っている。

    F1アカデミーでタイトル争いも一転
    オランダのライセンスで参戦するウィーグは、かつてフェラーリ・ドライバー・アカデミーに所属。2025年のF1アカデミーではフェラーリのカラーを背負い、3勝を挙げてランキング2位となった。

    表彰台争いを続けていた当時から、まだ1年も経っていない。しかし現在の状況は大きく異なる。

    ウィーグは自身のSNSで、これまで表には出してこなかった苦境について明かした。

    「これをどう書けばいいのか、本当に分からない。シーズンを通してポジティブな部分を見せようとしてきたけど、実際には今年は間違いなく私のキャリアで最も厳しい1年になっている」

    「1年前、私はチャンピオンシップを争っていて、勝利を挙げ、ほぼ毎週末のように表彰台に立っていた。それから1年も経たないうちに、こんな状況になるなんて思ってもいなかった」

    開幕直前に「素晴らしい計画」が崩壊
    ウィーグによれば、2026年に向けて当初は明確なレースプログラムが用意されていた。しかし、シーズン開始直前になって計画そのものが消滅したという。

    「今シーズンに向けては素晴らしい計画があった。でも、シーズンが始まる少し前に、私にはどうすることもできない理由ですべてが崩れてしまった」

    「その時点では別のプランを組み立てるにはあまりにも遅かったし、自分ひとりでレースに出る機会を確保するのは本当に難しかった」

    モータースポーツでは、実績だけで翌年のシートが保証されるわけではない。カテゴリーをステップアップするほど参戦予算やメーカー、チームとの関係が重要になり、F1アカデミー卒業後のキャリア形成も大きな課題となる。

    ウィーグはベルギーの耐久シリーズ「Belcar」で3レースに出場する機会を得た。ART RacingからGTカーでデビューし、初戦で表彰台を獲得している。

    「Belcarで3レースに出場できたのは幸運だったし、その機会を与えてくれたART Racingには本当に感謝している。GTカーでのデビュー戦では表彰台にも上がることができた」

    しかし、その数少ない参戦機会も続かなかった。

    「でも、出場する予定だったゾルダー24時間もなくなってしまった。だから今のところ、これから出場するレースは何もない」

    マヤ・ウィーグ(F1アカデミー)

    F1アカデミー卒業生で分かれる進路
    ウィーグの苦境は、F1アカデミー卒業後のキャリアが一様ではないことも浮き彫りにしている。

    F1アカデミー王者のドリアーヌ・ピンは、メルセデスF1の開発ドライバーを務めるほか、プジョーのハイパーカー開発ドライバー、フォーミュラEのシトロエンでも開発ドライバーを担当。2026年にはル・マン24時間レースにも出場するなど、耐久レースを含めて活動の場を広げている。

    また、2024年王者のアビー・プリングは、フォーミュラEの日産でルーキー兼シミュレータードライバーを務めながらGB3に参戦。今季はすでに1勝を挙げ、ランキング7位につけている。

    一方、ウィーグはフェラーリの育成プログラムを離れた後も、現在F1アカデミーでフェラーリ代表を務めるアルバ・ラーセンのメンターとして活動してきた。だが、自身が求めているのはサーキットの外から後輩を支えることだけではない。

    「見ていたいんじゃない。レースがしたい」
    レースから離れる時間が増えたことで得たものもあるとしながら、ウィーグはドライバーとして走り続けたいという思いを強調した。

    「今年はものすごく多くのことを学んだし、人間としても大きく成長した。でも、私は見ていたいんじゃない。レースがしたい」

    「最高レベルの舞台で再びコースに戻って、自分に本当は何ができるのかを示したい」

    「それが残りの人生でやりたいこと。もう一度マシンに乗るために、毎日努力している」

    ウィーグにとって特に受け入れがたいのは、F1アカデミーを含め、これまで積み重ねてきた結果が次のチャンスにつながらなかったことだ。

    「モータースポーツは厳しい世界。これまで何年も積み上げてきた結果が、何かにつながると思っていたんだと思う」

    それでも、復帰への希望を失ったわけではない。

    「厳しい時期を支えてくれているみんなに感謝している。身近な人たちは、ひとつの扉が閉じれば別の扉が開くとずっと言ってくれている。私はそれを信じることにしている」

    F1アカデミーで勝利を重ね、フェラーリの有望株として将来を期待されたウィーグ。それでも次のシートを確保できない現状は、若手ドライバーがカテゴリー卒業後に直面するモータースポーツの厳しい現実を示している。再びレースに戻るための「次の扉」を開けることができるか、23歳のウィーグにとって重要な時期が続く。

  • フェルナンド・アロンソ F1続行でも引退でも「アストンマーティン」とデ・ラ・ロサ

    フェルナンド・アロンソ F1続行でも引退でも「アストンマーティン」とデ・ラ・ロサ

    フェルナンド・アロンソのF1での将来について、アストンマーティンのアンバサダーを務めるペドロ・デ・ラ・ロサが見解を示した。アロンソが現役を続行する場合も、F1ドライバーとして引退する場合も、アストンマーティンとの関係を継続することになるという。

    45歳のアロンソを巡っては、古巣アルピーヌへの復帰を含め、2027年以降の去就がF1ドライバー市場の注目材料となっている。

    しかし、デ・ラ・ロサによれば、アロンソが今後下す決断は「どのチームで走るか」ではなく、アストンマーティンでドライバーを続けるか、それとも別の役割に移るかというものになるようだ。

    「いずれにせよ、彼は僕たちと一緒にいる」
    アロンソは2024年にアストンマーティンとの契約を延長。当時は2026年末までの複数年契約と発表されたが、Sky Sports F1の実況を務めるデビッド・クロフトは、実際には5年間に及ぶ契約が結ばれていると伝えている。

    その契約については、アロンソが最初の期間をF1ドライバーとして過ごした後、現役を退いた場合にはアンバサダーなど別の役割でアストンマーティンとの関係を継続できる内容になっている可能性も指摘されている。

    デ・ラ・ロサはイタリアの『Automoto』に対し、アロンソの将来について次のように語った。

    「彼がチームに残ってくれれば素晴らしい。でも、それは非常に個人的な決断だ。彼には考えなければならないことがたくさんあるし、どんな選択をしても僕たちは尊重する。僕たちが口を挟むこともない」

    「僕たちにできるのは、彼に可能な限り最高のマシンを用意することだけだ。彼は今後数カ月のうちに決断するだろう。だからこそ、今それを与える必要がある」

    そのうえで、デ・ラ・ロサはアロンソがアストンマーティンを離れて別のF1チームへ移籍する可能性を事実上否定した。

    「いずれにせよ、彼は僕たちと一緒にいる。ドライバーとしてなら素晴らしい。でも、アンバサダーになることもできるし、別の役割を担うこともできる」

    この発言通りであれば、アロンソにとって2027年以降の選択肢は、アストンマーティンでF1ドライバーを続けるか、現役を退いてチーム内で別の役割を担うかということになる。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    2027年F1の方向性も現役続行の判断材料
    アロンソが現役を続けるかどうかを左右するのは、アストンマーティンの競争力だけではない。2026年に導入された新世代F1マシンのドライビング特性について、アロンソはこれまで厳しい意見を繰り返してきた。

    特に新パワーユニットでは電動側の比重が大幅に高められたことに不満を示しており、F1がドライバーにとって純粋に楽しめるカテゴリーであり続けることの重要性を訴えている。

    F1では2027年に向けてレギュレーションの調整が進められており、パワーユニットについてもバッテリーへの依存度を抑える方向で変更が検討されている。

    デ・ラ・ロサは、こうした今後のF1の方向性もアロンソの決断に影響すると考えている。

    「彼には残ってほしい。彼は特別なドライバーであり、素晴らしいリーダーだからだ」

    「彼は現代のマシンをドライブすることを楽しみたいと思っている。だからこそ、今後数年間に予定されている変更によって、将来のF1がどのようなものになるのかを知ることは有益だろう」

    アストンマーティンの競争力も重要な要素
    アロンソにとって2026年シーズンは厳しい戦いが続いている。ここまで獲得したのは1ポイントで、ドライバーズランキング19位。F1キャリア23シーズン目を迎えたベテランにとって、ルーキーイヤー以来となる低い順位に沈んでいる。

    予選でも苦戦が続き、第11戦ハンガリーGPでようやく今季初めてQ2進出を果たした。一方、アストンマーティンはハンガリーで大幅にアップデートされたAMR26Bを投入。さらにHondaもオランダGPに向けて改良版パワーユニットを準備しており、シーズン後半の巻き返しに期待がかかっている。

    デ・ラ・ロサが「可能な限り最高のマシンを用意することだけ」と語ったように、アストンマーティンが今後どこまで競争力を高められるかは、アロンソの現役続行を後押しする重要な要素となる。

    ただし、今回の発言でひとつの方向性は明確になった。アロンソがF1ドライバーとして走り続ける場合も、引退を決断する場合も、その将来はアストンマーティンと結びついている。今後数カ月で下されるという決断は、移籍先を選ぶものではなく、アストンマーティンでどのような役割を担うかを決めるものになりそうだ。

  • キャデラックF1 ハータとカマラの2027年起用説を否定「根拠がない」

    キャデラックF1 ハータとカマラの2027年起用説を否定「根拠がない」

    キャデラックF1のCEOを務めるダン・トウリスが、2027年のドライバーラインナップを巡って浮上しているコルトン・ハータやラファエル・カマラの起用説について言及した。現時点ではセルジオ・ペレスとバルテリ・ボッタスのコンビを変更する計画はないと強調している。

    一方でトウリスは「F1では状況は常に変わり得る」とも語り、将来的な若手起用の可能性を完全には否定しなかった。

    特にキャデラックのテストドライバーを務めるハータはF1昇格を目指してインディカーからFIA F2へ転向しており、その動向が注目されている。

    ハータはF1昇格を目指してインディカーからF2へ
    キャデラックはF1参戦初年度となる2026年、ペレスとボッタスという経験豊富な2人をレギュラードライバーに起用した。

    しかし、2027年に向けたドライバー市場を巡ってはさまざまな憶測が広がっている。ペレスにはウィリアムズ移籍説が浮上しており、その背景にはカルロス・サインツJr.の去就を巡る動きがある。アレクサンダー・アルボンについても将来が確定しているわけではないとされている。

    一方、ボッタスは自身が今回のドライバー市場に加わることはないと明言しているものの、そのシートをハータが引き継ぐ可能性も取り沙汰されてきた。

    ハータはキャデラックの将来的なF1ドライバー候補として以前から期待されている。F1参戦という目標を追うためにインディカーでのキャリアに区切りをつけ、2026年はハイテックからFIA F2に参戦するとともに、キャデラックF1のテストドライバーを務めている。

    ただし、F2ではここまで期待された成績を残せていない。さらに2026年にはキャデラックから4回のF1フリー走行1回目(FP1)への出走が予定されているものの、現在のF2ランキングのまま追加のスーパーライセンスポイントを獲得できなければ、2027年のF1参戦に必要な基準に1ポイント届かない可能性がある。

    ラファエル・カラム

    カマラ獲得説も浮上 キャデラックCEOは「根拠がない」
    ハータがF2で苦戦するなか、新たな候補として名前が挙がったのがフェラーリ・ドライバー・アカデミー所属のラファエル・カマラだ。

    前年のFIA F3王者であるカマラは、2026年のF2でレッドブル育成のニコラ・ツォロフ、アルピーヌ育成のガブリエレ・ミニとタイトルを争っている。ペレスの移籍説と重なったことで、キャデラックが2027年にカマラを起用する可能性が取り沙汰されるようになった。

    しかし、トウリスは若手ドライバーへの交代が現時点で具体的に検討されているとの見方を否定した。

    「若いドライバーが加入してチームをさらにプッシュすることになるのか? もちろん、それは我々が考えることのひとつではある」

    「ただ、我々には経験豊富な2人のドライバーがいて、彼らには非常に満足している。2人はチームをプッシュしてくれているし、これからもそうしてくれるだろう」

    そのうえでトウリスは、現在のラインナップを維持する方針を示しながらも、F1のドライバー市場では状況が急変する可能性があることを認めた。

    「ただし、ひとつ但し書きを付けておく。ここはF1だ。状況は常に変わり得る。現時点で2027年に向けた変更の予定はないが、物事はいつでも変わる可能性がある」

    「若いドライバーについていくつか噂が出ていることは知っている。ただ、それらには根拠がない。だから我々がそこに焦点を当てることはない。現時点では、そのことに注力していない」

    経験を優先するキャデラック ただし2027年への扉は閉じず
    キャデラックにとって、ペレスとボッタスの経験は新規F1チームを構築するうえで大きな意味を持つ。参戦初年度の2026年はまだポイントを獲得できておらず、中国GPでボッタスが記録した13位がここまでの最高成績となっている。

    さらにチームは夏休み中に体制を変更し、チーム代表のグレアム・ロードンを退任させ、元アルピーヌF1エグゼクティブディレクターのマルチン・ブコウスキーを後任に据えた。組織そのものが発展途上にある段階だけに、経験豊富なペレスとボッタスを維持することには一定の合理性がある。

    その一方、キャデラックは将来を見据えたドライバー育成も必要になる。ハータはすでにチームのテストドライバーとしてF1プログラムに組み込まれており、カマラをはじめとする若手の名前も今後さらに浮上する可能性がある。

    トウリスの発言から読み取れるのは、2027年の基本方針はペレスとボッタスの継続であり、ハータやカマラの起用が具体化している事実はないということだ。ただし「状況は常に変わり得る」とあえて付け加えたことで、キャデラックが将来的なドライバー変更の選択肢まで閉ざしているわけではないことも明確になった。

  • フェリペ・マッサ 2009年F1大事故の記憶 スメドレー「助かるか分からなかった」

    フェリペ・マッサ 2009年F1大事故の記憶 スメドレー「助かるか分からなかった」

    2009年F1ハンガリーGPでフェリペ・マッサを襲った重大事故について、当時フェラーリでレースエンジニアを務めていたロブ・スメドレーが、事故発生直後の混乱と病院で過ごした時間を振り返った。

    予選中、前方を走っていたルーベンス・バリチェロのマシンから脱落したサスペンションのスプリングがマッサのヘルメットを直撃。意識を失ったマッサはタイヤバリアに衝突し、頭部に重傷を負った。

    緊急手術によって一命を取り留めたものの、当時は生命が危ぶまれるほど深刻な状態だった。

    異変に気づけなかった事故直後
    スメドレーは『High Performance Racing』ポッドキャストで、事故が起きるまでマッサにもフェラーリにも好感触があったと振り返る。

    「チームのオペレーションは2008年からさらに一段階上がっていたし、フェリペ自身もそうだった。安定していいパフォーマンスを発揮していた」

    「ハンガリーは間違いなくマシンに合うレースだと思っていたし、予選でもまずまずの結果を出せると思っていた。実際のところマシンはひどかったけど、それでも彼は予選では常にトップ10に入っていた」

    事故はマッサがアタックラップを開始し、ターン5へ向かう上り坂で発生した。

    「彼が減速し始めるのが見えた。事故には見えなかった。だからエンジンかギアボックスが壊れたと思った。マシンが止まろうとしている、よくある光景に見えた。ただ、少しスピードが高かった」

    スメドレーは無線で「どうした?」と問いかけた。しかし返事はなかった。

    「最初は腹を立てていて話したくないんだと思った。予選の最中だし、ギアボックスかエンジンが壊れたのなら、話したくないこともある」

    ところが、マッサのマシンはそのままタイヤバリアへと向かった。

    「突然止まったのを見て、『クラッシュしたのか』と思った。でも、その前から減速していた。何かがおかしかった」

    ガレージ側でテレメトリーを確認すると、さらに不可解な状況が判明した。

    「スタッフのひとりから、上り坂でブレーキを踏み始めると同時にアクセルも踏んでいたと言われた。しかもブレーキもアクセルも強く踏んでいた。『これはおかしい』と思った」

    無線から聞こえた「うめき声」
    その後、オンボード映像が映し出され、スメドレーは事態が通常のクラッシュではないことに気づき始めた。

    「彼はステアリングに手を置いたまま、左側へ流れていった。そして縁石を越え、コースの反対側まで行って、グラベルを跳ねながらタイヤウォールに突っ込んだ」

    「『そのまま壁に向かって走っていった』と思った。しかも手はまだステアリングにあった。それ自体がものすごく異常だった。ドライバーが壁に突っ込むときは、最後の瞬間に手を離すものだからね」

    フェラーリのピットは「完全な混乱」に陥った。

    「ガレージも僕も混乱していた。誰にも何が起きたのか分からなかった」

    そのとき、沈黙していたマッサの無線回線が突然開いた。

    「ひどい、喉の奥から出るようなうめき声が聞こえた。本当に激しい痛みに苦しんでいる人の声だった」

    「おそらく彼は意識を取り戻しかけて、手を動かしているうちに本能的にボタンを押したんだと思う。何かを話しているわけではなかった。ただ、ひどいうめき声だけだった。その瞬間に『これは普通じゃない』と分かった」

    スメドレーはマッサ本人と、その音声を聞いていたフェラーリのスタッフを守るため、無線を切ったという。

    当初は「鳥が当たった」と考えたフェラーリ
    事故原因もすぐには分からなかった。

    数分後、当時ルノーのチーム代表だったフラビオ・ブリアトーレがフェラーリのピットウォールを訪れ、事故時の静止画像を見せた。フェラーリ側は当初、鳥がマッサのヘルメットに衝突したのではないかと考えたという。

    しかし、その後の情報から、バリチェロが駆るブラウンGPのマシンから脱落したサスペンションのスプリングが直撃したことが判明した。

    「ルーベンスのマシンから何かが外れたらしいという話が出てきた。実際にはリアサスペンションのスプリングだった。800グラムか1キロくらいのものだったと思う」

    マッサはサーキットのメディカルセンターに搬送され、その後ヘリコプターでブダペスト市内の病院へ運ばれた。

    「鎮静処置を受け、気管切開をして、それからヘリで運ばれた」

    「助かるかどうか分からない」
    スメドレーも病院へ向かった。そこで待っていたのは、マッサが生き延びられるかどうかさえ分からないという厳しい現実だった。

    「ブダペストには軍病院があって、頭部外傷について世界でもトップクラスの技術と医師がいた。でも、あの土曜の夜は手術中で、『助かるかどうか本当に分からない』という状態だった」

    当時を語りながら感情を抑えきれなくなったスメドレーは、一度言葉を止めてから話を続けた。

    マッサは人工的な昏睡状態に置かれた。日曜夜には「かなり安定した」ものの、依然として予断を許さない状態だったという。

    スメドレーは決勝が行われる日曜日にハンガロリンクへ戻った。

    「チームを支えるためだった。でも、たぶん僕はあそこにいるべきではなかったと思う。心ここにあらずだった」

    フェリペ・マッサ F1

    目覚めたマッサ「来週にはマシンに戻る」
    翌週末、フェラーリはスメドレーを再びブダペストへ向かわせた。マッサは昏睡状態から目覚め、徐々に回復し始めていた。

    だが、事故によるダメージは外見からも明らかだった。

    「衝撃的だったけど、ある意味では笑ってしまうほどだった。頭が文字どおり普段の2倍くらいに腫れていて、全部が黒と青になっていた。本当に頭全体があざだらけだった」

    意識を取り戻した直後には混乱も見られた。

    「最初は僕にポルトガル語で話しかけてきた。その後は僕が誰なのか分からなくなった。そして、自分がマクラーレンのドライバーだと思っていた」

    それでも記憶が戻ると、マッサが真っ先に考えたのはF1への復帰だった。

    「僕が誰なのか、自分がどのチームで走っているのか分かるようになると、ずっと『ステファノ(ドメニカリ)に電話して、来週にはマシンに戻れると伝えてくれ。月曜日からテストできる。もうかなり良くなった』と言っていた」

    事故を機にF1を辞めることも考えたスメドレー
    長年マッサと密接に仕事をしてきたスメドレーにとって、この事故は自身のキャリアについて考え直すほど大きな出来事だった。

    事故後には、F1で仕事を続けるべきなのか疑問を抱き、その思いをフェラーリ側にも伝えていたという。

    最終的にはF1に残ることを決断した。スメドレーは後に、その選択について、残りのF1キャリアを「心から楽しむことができた」と振り返っている。

    スメドレーは2013年までマッサのレースエンジニアを務め、2014年にウィリアムズへ移籍して車両パフォーマンス部門の責任者に就任。奇しくもマッサも同じ2014年にフェラーリからウィリアムズへ移籍した。

    一方、マッサは2009年シーズンの残りを欠場したものの、翌2010年の開幕戦からフェラーリでF1復帰を果たした。その後ウィリアムズでキャリアを続け、2017年F1アブダビGPを最後にグランプリから退いた。

    17年が経過しても、スメドレーにとって2009年ハンガリーGPの記憶は鮮明に残っている。突然途絶えた無線、理解できないマシンの動き、そして回線から聞こえてきたマッサのうめき声。生命の危機から復帰を果たしたマッサの事故は、F1の安全性を改めて問い直す大きな契機のひとつとなった。

  • マックス・フェルスタッペン F1オランダGP惜別の特別ヘルメット「一生残る思い出」

    マックス・フェルスタッペン F1オランダGP惜別の特別ヘルメット「一生残る思い出」

    マックス・フェルスタッペンが、2026年を最後にF1カレンダーから姿を消すオランダGPに向け、母国とザントフォールトへのオマージュを込めたスペシャルヘルメットを公開した。

    2021年に36年ぶりの復活を果たしたオランダGPは、8月30日に決勝が行われる2026年大会をもって開催を終了する。母国の英雄フェルスタッペンと「オレンジ・アーミー」が作り上げてきたザントフォールトの熱狂も、ひとまず最後の週末を迎える。

    最後の母国F1に捧げるスペシャルヘルメット
    フェルスタッペンはSNSを通じ、最後のF1オランダGPで使用するワンオフのヘルメットデザインを披露した。

    「象徴的なグランプリ。一生残る忘れられない思い出。最後のホームレース、特別なヘルメット。オランダとザントフォールトへのオマージュだ」

    今回のデザインには、単なるホームレース仕様以上の意味が込められている。2026年大会を最後にオランダGPがF1カレンダーから外れるため、フェルスタッペンにとってF1ドライバーとしてザントフォールトを走る最後の機会となるからだ。

    オランダGPは1985年を最後に長く開催されていなかったが、2021年にF1カレンダーへ復帰。復活初年度からフェルスタッペンが勝利し、2022年、2023年も制して3連勝を達成した。

    スタンドを埋め尽くすオレンジ色のファンと、会場を包む独特の熱気は復活後のオランダGPを象徴する光景となった。フェルスタッペンの台頭とともに実現した母国GPは、わずか数年でF1屈指の人気イベントへ成長した。

    マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング) オランダGPヘルメット

    「ファンと一緒に楽しみたい」
    夏休み前、フェルスタッペンは最後のオランダGPについて、結果だけではなく母国ファンとの時間そのものを楽しみたいと語っていた。

    「僕のホームグランプリだから、もちろんすごく楽しむつもりだ。ドライビングの面でも楽しめればいいね! 少なくとも、この週末(ハンガリー)よりは楽しめることを願っているよ」

    2026年のレッドブル・レーシングはRB22の扱いに苦しむ場面もあり、フェルスタッペンにとって母国戦だからといって勝利を約束された状況ではない。それでも、ザントフォールトそのものがなくなるわけではないとして、F1撤退後については前向きに受け止めている。

    「ファンに会えるのは素晴らしいことだ。確かにF1グランプリはなくなるけど、ほかにもたくさんのカテゴリーがそこでレースをするし、トラックデーで走りたければサーキットがなくなるわけでもない」

    「だから僕はこれからもそこで走って楽しめる。ただ、それがF1ではなくなるというだけだ。それはそれでいいと思っている」

    「僕はただ、ファンと一緒に楽しみたいんだ」

    ザントフォールト復活がF1に残したもの
    フェルスタッペンは、オランダGPを復活させた関係者の仕事についても高く評価している。

    「彼らがこのグランプリを復活させるためにやってきたことは、本当に信じられないほど素晴らしい」

    「最初のレースを開催したとき、グランプリをどう開催して、どう観客を楽しませるべきなのかという意味で、ほかの多くのグランプリにとっても素晴らしいお手本になったと思う」

    ザントフォールトでのオランダGPは、1985年にニキ・ラウダがマクラーレンで勝利したのを最後にF1カレンダーから姿を消した。その後、フェルスタッペンの活躍によって国内でF1人気が急速に高まり、2021年に待望の復活を果たした。

    復活後はオレンジ色に染まった大観衆がフェルスタッペンを後押しし、ザントフォールトならではの雰囲気を作り上げた。フェルスタッペン自身も3勝を挙げており、母国ファンの前で数々の印象的な瞬間を残してきた。

    2026年8月30日、その歴史はいったん区切りを迎える。フェルスタッペンにとって最後のF1オランダGPは、勝敗だけではなく、自身のキャリアとともに歩んできたザントフォールト、そして母国ファンへの感謝を示す特別な週末となる。